君と。
@Cyanmio
第1話
「愛してるよ」
僕はいつ死んでしまうのか分からない彼女にそう微笑んだ。
病室のベットに横になり、青白い顔をした君は囁くように
「私もよ…」
と僕に言った。
僕は頷いて君の頭を優しく撫でた。
君は嬉しそうに目を瞑った。
そのまま手を君の顎に持って行き、くいっと上げた。
君は目を開け、そしてまた閉じた。
僕は自分の唇を彼女の唇に重ねた。
唇を離すと彼女は泣いていた。
それには色んな思いが込められてるんだと僕は思った。
時計を見て時間を確認すると、そろそろ家に帰らなければならない頃だった。
「じゃ、またね」
そう言った時に泣きながら微笑んだ彼女を見て、僕はこの時帰りたくないな、と思った。
それはきっと彼女の…君の涙があまりにも綺麗で、そしてとても儚いものだから。
ここに居たい気持ちは何処かに置いといて、僕は病室から出た。
ドアを閉めた時、君の
「ごめんね」
と言う声を聞かないふりをして、走って病院から出た。
彼女の入院生活が始まったのは今から1ヶ月程前だっただろうか。
その時のことはよく思い出せない。
ただ、凄く焦っていたのは覚えている。
自分の愛する人が目の前で倒れたら誰だって焦る。
病院に連れて行くと、倒れたのは健康がすぐれていないから、と言われた。
そんなことが何度も続き、入院した。
入院したばかりの頃は歩いたりすることはできた。
でも今では歩くことができず、寝たきりだ。
だんだん食欲もなくなってきて血色も悪くなってきた。
そんな彼女を見て、一刻も早く治ってくれ‼︎、と祈る自分と、もう無理だろうと諦める自分がいる。
僕には彼女を見守ることしかできない。
彼女が辛い時に励ましの言葉を言うことしかできない。
そんな自分が、憎い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます