第44話

「……ということでだな、文化祭準備では生徒会は門の飾り付けを主に行い、当日、役員は風紀委員の見回りの手伝いをすることになる」


「よろしくねー」

 ……どうやら、風紀委員の手伝いをするらしい。大変そうだな、オイ。


 ――いや、他人事じゃないんだけど。



「で、藤原には小河と行ってもらうことにする。文化祭デートだ、喜べ」


「はぅゎ……」

 は、春香ちゃん……?何動揺してるんですか……?


「はいはい、ありがたき幸せ」


「もう少し喜べ、若人よ」

 一歳差だけどな。


 と、まんざらでもない春香ちゃんを横目に、僕は生徒会長と風紀委員長に弄ばれるのであった。


 *


「で、会計の割り振りとかってどうするんですか?」

 仕事の話に戻す。

 真面目な話に飽きたのか、風紀委員長はいつの間にか帰っていた。


「とりあえず各クラスからの出し物の案の提出からだ。それの可否を決めてからじゃないと予算も決まらんだろう」

 至極まっとうな意見だ。


「それじゃあ、それまで僕の仕事はない――ということですね」


「まあそうなるな。せいぜい来年度予算が出るまでは仕事は少ないだろう、ゆっくりしてくれ」


 怠惰な僕としては嬉しい限りだ。


「で、小河だが……副委員長はとりあえず私の仕事を覚える必要がある。が、私がほぼ生徒会全ての仕事をしてしまっているので君には無理だろう」


「だから、生徒会長としてやることをリストアップしておいた。参考にしてくれ」


 渡したのは薄いファイル。いつも山のような書類を作成している会長には似つかわしくない厚さだった。


「ほ、本当にこれだけなんですか?」


「これだけだ。嘘はついてないぞ」


 ――そんなに多いのに、か。


 さっと見えた仕事量は僕のそれとは比べ物にならないほど多く、改めて会長の超人ぶりに感嘆する――

 が、常人には少なくない量を"これだけ"と言い切った春香ちゃんも充分すごい。



 何も出来ない俺がこんな所に居ても良いのだろうか……

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