第22話

「……」


「……」


 重い沈黙……

 先に口を開いたのは僕だった。


「どういう意味……だ?」


「そのままの意味です」


「そのままって……」

 付き合ってくださいという彼女の言葉。それが理解できないわけではない。ただ、


「なんで僕なんだ?春香ちゃんなら他にもっといい人を選べるだろ」

 と、ずっと思っていた疑問を口にする。

 そりゃそうだろう。彼女は学校一といっても差し支えないほどの美少女で、僕はただの冴えないオタクだからだ。


「それでも、センパイが良いんです――。その、恋人のフリをしてもらうのに」


 ――フリ……?

 一瞬思考ががフリーズする(フリと掛けてはない)


「正直、もう言い寄られたりするのが面倒くさいんです。私だって人間ですから人の好意を断るのに良心は痛みます。」

 そういうことか。


「要するに、男避けってことだな」


「そういうことです。一番の理由はセンパイがそばに居ても自然で居られるからですけど♪」


 かわいさってほんとに罪深いな。さっきので惚れそうだったぞ僕。


「それで、お願いできませんか?」


「まあ、しょうがないかな……」

 折れる。


「ありがとうございますっ!」



 彼女が見せたその笑顔に、僕は一生勝てないだろう――

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