それは突然に
第1話
こうなった理由を紐解けばだいぶ前にまで遡ることになる――
*
花びらの舞う季節、慣れない制服を着て、新しい生活に戸惑いながら登校する新入生とおぼしき女の子を眺めながら、いつものように校門へ続く長い坂を登る。
それは長く続いた休み明けの体には堪え、まだ坂の中盤だというのに息が上がっていた。
「おっすおはようさん!」
と呼びかけられる。答えるのも辛い。
「なんだお前か……」
ため息混じりに答える。
「なんだとはなんだ。俺たち親友だろ?」
とこいつは明石耀司。僕の数少ない親友だ。
「朝から元気すぎるんだよ……もう少し春休みへの未練とかあっても良いんじゃないか?」
と気怠げに言うと、
「未練持ってても時間は後戻りできねぇんだ、だから今を楽しむしかないんだよ」
と返されてしまった。
なるほど、それもそうか……と思いそれ以上は言い返さなかった。
「それより今年の新入生は全体的にかわいいらしいぞ〜、それに一人ずば抜けてかわいいっていう専らの噂だ」
「それマジなのか? 楽しみだな」
「あぁ!今年こそ彼女の一人ぐらい欲しいぜ……」
というこいつ。運動神経が良いだけでなく、何事もそつなくこなせるので女子からの人気が実は高い。だが僕と一緒にいる事が多いため話かけられないらしい。少しだけ申し訳ないと思う(思うだけ)。
「あそこの子かわいいな」とか「あの子さっっき風に吹かれてパンチラしてたぞ」とか男同士のたわいも無い話を続けているといつの間にか校門に着いていた。
「今年も同じクラスだと良いな!」
「あぁ」
と短く返し、僕はクラス分けが掲示されている中庭へと向かった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます