第2.5話 再誕
「よく頑張ったわね。大丈夫、元気な男の子よ。ほら、こんなに元気に泣いて……」
視界はまだ霞んでいる。
体中が痺れているようで、腕を伸ばすことすら出来そうにない。
体の内側の殆どが、持って行かれてしまったような感覚。
顔の横に、「私の内側」だったものが寝かせられる。
湖の底から取り出したばかりのような、薄い蒼の肌。
その小さな手に、そっと指を乗せる。
弱々しく、けれどすがるように、小さな力で懸命に指を握られる。
それだけで、この子との繋がりを感じられる。
私の内側が、新たなもので満たされていく。
「ああ……よかった、わたし、この子を、無事に……」
「ええ……長い戦乱の果てに訪れた、私達の平穏な世界に生まれてきてくれた最初の子よ。この子がこれからの未来に新たなものを築いていく、最初の世代になるのよ」
「よく耐えてくれた。里の長として、お前とお前の子にはいくら感謝してもし足りぬ……それでは、これより祝福と命名の儀を執り行う。神樹の輝石に、お前とお前の子の手を重ねて乗せよ。そして告げるが良い」
産婆を務めてくれたイルメアの後ろから族長様が歩み出て、指輪を嵌めた手を前に出す。森の精霊と私達との繋がりの印であるこの石に、子の名前を告げるのが里の習わし。わたしの母様もそうしてくれた。ようやく、わたしの番が来たのだ。震える手で我が子とともに指輪に誓う。
「精霊よ、我が子を新たな生命として受け入れ給え。我が子の名前は、マキア……」
力が尽きる。
子のけたたましい泣き声と、その小さな重みを感じながら眠りに落ちる。
次に目覚める時、わたしは、母に――
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