怪盗ドラゴン 闇夜に現る!

東 夏

第1話  早速ドジを踏む

ガッシャン!

ガラスの砕け散る音が響き渡る。

満月のはなつ光が、人間のシルエットをみせる。

一人の怪盗が、キラリと輝くダイヤを手に脱出用の気球の紐にながら空へと昇っていく。

・・・盗むのはいいが、少しダサくないか?

「撃てーーっ!」

警官たちが怪盗にむかって発砲する。が、気球はすでに空高くへと昇り届かない。

「ハッハッハ!」

怪盗の高笑いが響き、野次馬やじうまたちが息をのんで見守る。

まるでサーカスのショーでも見ている気分だろうか。

しかし・・・。

つるっ

空へと舞っていた怪盗の体が、地面へと落ちていく。

そのまま街へと激突。

ガラガラガッシャーン!

しばらく何が起きたのかわからないように立ち尽くす野次馬やじうま

・・・なんなんだ怪盗コイツは!








「まったく、お前は本当にけしからん!」

中国の深い山奥のなかの屋敷のなかで、師匠に説教されている怪盗。

・・・あの高さから落ちても死ななかったことだけは認めよう。

「せっかくダイヤまで盗んだのに最後の最後でドジを踏んで獲物を落とすとは、どういうことだ!」

師匠—アデスの怒りは収まらない。

「わざとじゃないんだから許してください!」

「殺人してもわざとじゃなかったら許されるのか?」

・・・ものすごい例をだす人だな。

「私も5年間もあなたのもとで修業をしてきました!もうつべこべ言われる権利はありません!」

あくまで反論する怪盗。

「弟子の分際で師匠に口出しするな!」

「もういいです!この屋敷を出ていきます!」

「お前なんかが外の世界にでてみろ!世界の怪盗に失礼だぞ!」

「師匠には言われたくありません。」

怒りが爆発したアデスがすさまじいスピードで怪盗―ドラゴンに向かって蹴りを入れる。

「ぐはっ!」

屋敷を突き抜け外へ飛ばされるドラゴン。

「ふんっ!老人を甘く見るなよ!」

・・・山奥でこんな爺さんにあったら注意しましょう。

なんだかんだあって、ドラゴンは家出をした子供のように泣きべそをかきながら出て行った。

・・・ほんとにコイツは怪盗なんですか…?





モンゴルの大草原を歩く一人の男がいた。

いや、正確にはである。

そして、空を見上げながら「まずは飛行船がほしいなぁ…。」とつぶやいている。

馬に乗ったモンゴル人が、不気味そうに通りすぎていく。

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