ヒヤリハット!
Jami
1 出口
僕の通勤路にはトンネルが多い。短いものから長いものまで、明るかったり少し薄暗かったり。ラジオさえ消え行く長いトンネルは本当に暇でしょうがない。
今日は帰りが遅くなった。眠気覚ましのガムや珈琲ももはやあまり意味がない。それでも必死に運転する。本当はコンビニに寄りたいのだが既にコンビニなど停まる場所さえない道に差し掛かり、そして、一番長いトンネルに入ってしまった。
しばらく走る。対向車もなく、前に車もないからすぐに抜けられる。
そう思っていた。
あれ?やけに長いな……
そう思ったのは出口と思われるトンネルの先に対向車らしきライトの光が見えるのに一向に向かってこないこと。そして、一向にトンネルを抜けられないこと。
寝ぼけているのか?
まだ眠たい気持ちはあるが意識はハッキリしつつある。それどころか進んでも進んでも出口の見えない、誰もいないトンネルに違和感を覚えて目が冴えてきた。
そしてそれは恐怖。
進んでも。
進んでも。
進んでも、抜け出せない。
ゾッとした。目を背けて目を瞑ったりでもしたら、壁に激突してしまうかもしれない。停まったりしたらよくある話の何かが自分を取り囲むかもしれない。どっちにしろ進むしかないと直感的に判断した。しかし、出口など、ない。救いも、ない。
僕は途方にくれた。そして、ドキドキと脈打つ心臓が、次の瞬間、静かになる。
僕は出口に向かって走り続ける。
──本日未明、○○市国道○号線、○○トンネルの手前で事故がありました。運転していたのは二十代男性会社員。対向車はなく、単独でトンネル脇に激突し、意識不明の重体です……───
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