エウロパの海、より。〈ペーパー配布SS〉

佐々木海月

エウロパの海...vol.1

エウロパは、木星の衛生だ。

ガリレオ・ガリレイが発見した。


  * * *


エウロパには、人魚がいる。

透明な青いひれで、凍るように冷たい海を泳ぎ暮らしている。


エウロパには、ときどき銀色の鳥がやってくる。

金属の翼を持つ、物言わぬ鳥だ。

聡明な人魚たちは、それが遥か遠くの、青い水の星から来ていることを知っている。

そして、いつかその銀色の鳥が、自分たちと言葉を交わせる誰かを乗せてやって来るのを、心待ちにしているのだ。


けれども残念ながら、個の命に限りがあるように、種の命にも限りがある。


銀色の鳥が、言葉を話す人々を乗せてこの星を訪れる頃には、人魚たちは皆、その美しい鱗を海に散らし、息絶えしまう。


この星を訪れた人々は――我々は、その美しい鱗を拾い上げ、叶わなかった邂逅にむせび泣くことしかできない。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る