第10話 救出後
ゴブリンの巣からレストの姉や他の女性達を救出してから、女性達に散々崇拝されながらベアードの森を後にした俺達は、メルリア国の門の前で前回会った門番と救出した女性達の今後について話していた。ちなみに血まみれだったシュースとクリシュは流石にそのまま行くのはアレなので浄化魔法で綺麗にしていた。
「コウヤ、シュース、レスト、クリシュの四名がゴブリンの巣のゴブリンを全て倒し、捕まっていた女性達を全員救出したと…分かった、女性達の保護、身元の確認はこちらで承ろう」
「ありがとう」
「それにしても、あんた達観光とか言ってたのにゴブリンの巣を潰すってなぁ…」
「腕試しに行ってただけさ、取り敢えず俺達はクエストの報告があるからこれで失礼する」
「そうかい、俺も上司に報告してこないとなぁ…」
俺達が見えなくなるまで手を振ってくる女性達と別れ、その後レストの姉を家に送り届けてから冒険者ギルドへ向かう。冒険者ギルドに到着し扉を開けると、俺を見た冒険者達がこそこそと小声で話をし始めた。
「おい、例の奴が戻って来たぞ」
「銀ランのザッコを一瞬で倒したって噂の…」
いや倒してないから、吹っ飛ばしただけだから。
心の中でツッコミを入れつつレリア担当している受付へと向かう。
「ゴブリン二十体の討伐、達成した」
「あ、ゴブリンの死体二十体分です」
亜空間からゴブリンの頭や上半身がどちゃどちゃと受付カウンターに出現する。洞穴に戻ったと思ったら討伐証明部位を取りに行ってたのか…完全に忘れてた。
「耳だけで良かったですが…確かに二十体ですね、確認しました」
「あ、ついでに討伐したゴブリンも出していいですか?」
「構いませんよ」
「分かりました」
そう言うとシュースは亜空間から更にゴブリンの死体をボトボトと受付に落として行く。予想以上の数にレリアは慌てて止める。
「ちょっと待って下さい!どれだけあるんですか!?」
「えーと、百五十匹位」
「この数時間で一体何を!?」
「ゴブリンの巣を少し壊滅させて来た」
「新米ですよね?なんで初日で数人でゴブリンの巣に特攻して来るんですかねぇ?」
「んー、ノリで」
「普通、ノリでする事ではないですから!」
レリアは少しの間頭を抱えていたが、直ぐにこちらへと向き直り、「解体所へ案内しますので私について来て下さい」と言って俺達を受付の奥へと引き連れて行った。
一番奥まで進むと、そこには位置的にギルドの裏へと続く金属製の重厚な扉があり、開けると血生臭い匂いと共にだだっ広い空間が目に入った。
「ここでなら幾らでもゴブリンを出して下さっても大丈夫です」
「広いな、ここなら問題なさそうだ」
「なら出しちゃいますね」
シュースが大量のゴブリンの死体を亜空間から地べたに続々と放り出していくと、死体は山の様に積み重なり、受付嬢の頭を更に痛くした。
「はい、まぁ、この量の解体は流石に少し時間がかかりますので討伐報酬の方は後日お渡しするということで大丈夫でしょうか?」
「俺は別に構わないぞ」
「私も構いませんよ」
「僕達は殆どついて行っただけなので…」
「分かりました、それでは報酬は明日以降にお取りに来て下さい」
レリアはそう言うと俺達と共に解体所を出て行き、受付へと戻っていった。
「それでは、またの活躍をご期待しております」
「さて、一仕事はしたしどうするかな…」
「あの、待って下さい!」
これからどうしようかと悩んでいると、レストが声をかけて来た。
「ん?レストどうした?」
「さっき衛兵の方が観光って言ってましたよね?それで、もし暇なら僕達と街を回りませんか?」
「街歩きか、そうだな…特にする当ても無いしのんびりするのも悪くないか、シュースもそれでいいか?」
「私も問題無いですよ」
レストとクリシュはパァー!と擬音がつきそうな位顔を輝かせた。
「それなら、僕達のおすすめの場所を案内しますよ!」
「美味しい食べ物が売ってるお店とかも!」
「まあ、お前達に任せるよ」
「「任せて下さい!!」」
やる気がバリバリだな、まあ美味しい物とか教えて貰えるみたいだし俺もテンションが上がりそうだな、シュースもニコニコしてるし。
「それじゃあ、クエストに行ってお腹も減ってそうですし美味しい物を食べ物ましょうよ!」
初めに、クリシュとレストに引っ張られてやって来たのはこんがりと焼けた一口サイズの肉が5個程串に刺された料理を売っている屋台だった。側から見てもとてもいい匂いが漂って来ており、食欲がそそられた。値段も銅貨三枚ととても安く、平民でも手軽に食べれそうだ。因みに硬貨についてはシュースの使っているのを見たり見せてもらったりして何となくだが把握した、纏めるとこんな感じだ。
小銅貨(十円相当)
銅貨(百円相当)
大銅貨(千円相当)
銀貨(一万円相当)
金貨(十万円相当)
金塊(百万円相当)
白銀貨(千万円相当)
一円相当の硬貨は無かったが、恐らくそんなに細かい価値の物は売ってないんだろうな。
そんな事を考えていると、いつの間にかクリシュがささっと屋台で俺達の分の串肉を買って来ており全員に差し出した。
「今日は私が奢ってあげますよー!」
「わぁー、ありがとうございます」
流石は女神、お供え物は遠慮せずに頂くようだ。
そして、渡された串肉にそれぞれ一斉にかぶりつくと口の中に沢山の肉汁が溢れ出した。
「ん〜美味しいです!」
「おぉ、確かに丁度いい塩加減と肉の歯ごたえだな」
「そうですよね、美味しいですよね!」
「やっぱり何度食べても飽きないなぁ」
それぞれが感想を口にしていると、串刺し肉の屋台のおっさんは照れ臭そうに頰を掻きながら俺達に喋りかけた。
「それは
「本当に、美味しい、ですねってあぁ、もう無くなりました…店主さんもう一個下さい!」
「あ、俺ももう一つ」
シュースと俺は美味しさのあまりあっという間に食い終わり、店主にお代わりを頼んだ。
「ははっ若者は良く食べるねぇ、はいよ、注文の二本とついでに一本オマケだ!」
「ありがとうございます!」
「本当、何個でも食えそうだな」
二人揃ってお代わりにかぶりついているのを見て、レストとクリシュが苦笑いを浮かべているが気にせず無我夢中で食べ尽くすと、案の定、オマケで貰った串肉が一つ残っていた。
「…どっちが食べましょうかね」
「俺にくれ」
「答えに迷いが無い!少しは女の子に譲るとかは…」
「残念、俺は男女平等主義者だっ!女性優先なんか拒否だ!」
「男女平等主義者って…せめて半分は下さいよ!」
「なら肉は五個だからシュースが二個な」
「いやいや、私が紅夜さんの分もお金払ってるんですから私が三個でしょう?」
「ぐっ!でもな、誰がお前を家に住ませてると思ってるんだ?」
「うっ!そ、それなら私も手助けをしているんですからが労いくらい…」
互いに譲らずに言い争っているのを見て、おじさんとレストとクリシュに温かい目で
「「「仲がいい(ですね)(ねぇ)」」」
と言われた。暫くして正気に戻った俺とシュースは、仕方無くじゃんけんでどちらが食べるか決める事にし、俺はといえば見事に負けたよこんちきしょう。
「あー、美味しいですぅ〜」
「くそぅ…」
「まあまあ、まだおすすめの屋台はありますからね?」
「モグモグゴクン…よし、すぐ行きましょう!」
「よし、レスト、クリシュ、案内を頼む!」
「分かりましたー、こっちですよー!」
その後、俺達はビットンバードの焼き鳥やらアーマフィッシュの焼き魚と、様々な食べ物を全員で笑顔を浮かべながら夕方まで食べ歩いていた。
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