狐火の呪い
Naru
第一話 事故
火燐(カリン)は学校の帰り、雑木林の隣にある道を1人歩いていた。遠くでカラスが鳴いている。火燐は誰もいない、静かな夕暮れ時が好きだった。
火燐が人とはどこか違うと思うようになったのは小学2年生の時だ。人には見えないものが見える。それは白い『もや』の様なものであったり、恐ろしい姿をした『なにか』だったりと、様々なものが見えていた。
それだけでも恐ろしかったが、学校で飼っていたうさぎの世話の日、火燐は朝早くに学校へ行き、いつも通りに餌をあげていた。
だが、その日はいつもと違っていた。胸の奥が痒いような、ちくちくと何かが刺さるような感じがしていた。火燐は胸を押さえ、うさぎに手を伸ばした。
すると、うさぎは苦しそうに地面に倒れると、間もなく息を引き取った。火燐は呆気に取られていたが、なぜだか先ほどの胸の違和感は無くなっていた。
後ろへ下がりながらうさぎを見ていると、次第にうさぎが腐っていった。(あの頃の火燐には溶けて消えるように見えた。)
とても恐ろしくなり、うさぎ小屋を飛び出した。その日は家に帰り、学校を休んだ。
次の日学校に来ると、すぐに担任の先生に呼び出された。
「昨日、みんなで飼っているうさぎが消えちゃったの。火燐ちゃん、何か知らない?」
火燐は震えて首を振った。
「でもね、ウサギ当番の紙に昨日名前を書いたでしょう?昨日は学校にきたの?」
「来て…ません」
先生は小さくため息をついた。
「先生は火燐ちゃんを信じます。でも、今は言えなくて嘘をついてしまったのなら、いつでもいいから先生に話して欲しいな」
先生は微笑んだ。火燐はこくんと小さく頷いた。
(言えるはず…ない)
自分でも理解ができないことが目の前で起きたのだ。そんなこと、人に言えるはずがなかった。
その日から火燐を犯人だと思っているクラスメイトからのいじめが始まった。
それは高校に入った今も続いている。
しばらく昔のことを考えながら歩いていると道路の真ん中になにか白いものが見えた。目を凝らすと猫のような体にふさふさの尻尾が見える。
(猫…?いや、狐?なんであんな所に)
隣が雑木林だから出てきてしまったのだと思った。ここら辺は車通りは少ないが、何となくその狐を眺めていた。
ちょうど横を通り過ぎるあたりで後ろからトラックの音が聞こえるのに気がついた。狐はじっとこちらを見ている。
まるで昔から知っているかのような感覚になった。そして、その狐はこちらへ足を向け、歩き始めた。
(…!)
火燐はカバンを放り出し、まるでアメフトのボールを取るように狐に手を伸ばした。音は消え、全ての動きがゆっくりに見える。
狐が驚いたように目を見開いた。狐に触れ、すくい上げるように狐を宙に投げた。そして、すぐ右でトラックのブレーキの音が聞こえた。
ドンッ!!!!
火燐の体はトラックにあたり、横に投げ出された。右肩に激痛が走るが、すぐにその感覚は無くなった。地面に頭を強く打ったのだ。
そこで火燐の意識は途絶えた。
静かに狐が火燐を見た。
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