【実践練習第13日目】三題噺

○ルール 三つの言葉をもちいて物語をつくる。単純に三つの言葉を挿入するだけではなく、ひとひねりあるとよい。此処では、実際に『2週間で小説を書く!』に用意されている、二組の三語をもちいて練習する。


 涙

 宇宙ねずみ(二次創作にあたるかもしれないので原書より変更)

 掘る


 愚生は故郷がすきではない。宇宙ねずみのせいだ。ほうはくたる日本列島のへきすうに位置する故郷ではむらくものかわりに宇宙ねずみきゆう窿りゆうこうしようしている。戦後しゆもない時代のSF小説にでてくるような生物だ。宇宙ねずみたしかに〈くも〉ではなく〈いきもの〉であって一年中発情期となっている。発情期の宇宙ねずみどうこくする。落涙しながら交尾してまつえいをふやすのである。ゆゑに故郷では一年中きゆう窿りゆうから宇宙ねずみのなみだがふりそそいでいる。一年間春夏秋冬もなく梅雨ばかりの世界を想像してほしい。ゆゑに我我はなみだで故郷が水没しないように無尽蔵に〈あな〉をほりつづけなければならない。〈あな〉のなかになみだをためるのだ。めいちようたる力仕事ゆゑに故郷の男性は十八歳になると〈あなほり〉を義務づけられる。きゆうていたいりよの経済活動は女性にゆだねられる。いくばくかの男性がきようてんいくばくかの男性が愚生のように故郷からとんざんした。いくばくかの男性は宇宙ねずみを神とさんぎようしていくばくかの男性はなみだを聖水としてえんした。愚生に理解できないのはほかの男性たちの大半が〈あなほり〉に人生をかけていることだ。〈あなほり〉こそが人生だといってもよい。性的なでもなければ精神分析学的なる隠喩でもないのだ。


 ハーモニカ

 黄色

 口ごもる


 天壌無窮の宇宙の構造についてはすいよりめいせんそうされてきた。就中なかんずく我我は〈宇宙のかたち〉について議論した。けんけんごうごうかんかんがくがくの議論が決着したのは十九世紀後半でありひつきよう宇宙は〈ハーモニカ〉のかたちをしていることがせんめいされた。我我人類は横幅一三八億光年縦幅五〇億光年厚さ二〇億光年のハーモニカの内部にせいそくしていたのだ。といえどもハーモニカひつきよう宇宙は沈黙していた。ハーモニカがりゆうりようと響動めくことはなかった。なにゆゑに宇宙がハーモニカのかたちなのかはわからなかった。同時に意想外なるはんちゆうで問題が解決することになる。ハーモニカのG♯の部分ではすいより〈黄色〉という神様をしんぴようする宗教家たちが生活していたが二十世紀中葉〈黄色〉の聲をきいたという預言者が登場したのだ。預言者はG♯かいわいからハーモニカ全域までふうし〈黄色〉のことでんしていった。やがて預言者はくちごもった。如何どうやら〈黄色〉は世界のしゆうえんでんしたらしい。あいまいとしているが神様である〈黄色〉はやがて黄色の息吹となってハーモニカをふきぬけるという。ハーモニカ内部の生命体はしつかいふきとばされる。ひつきよう宇宙は〈黄色〉が愛用していた楽器にすぎなかったのだ。じようの預言に喫驚した預言者は前述のように沈黙した。くちごもることが人類のためになったのかはわからない。

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