【実践練習第8日目】コップを眺める

○ルール 実際に、普通のコップにみずをいれて、スケッチする。むずかしいので400字程度でもかまわない。観察したことだけを描写する。最後に題名をつける。


 〈かげ〉の〈かげ


 透明無色ののコップに純水を八割方まんさせると純水に埋没した側面は透明無色というよりは灰褐色にせきする色彩になる。ひつきよう純水をけみして風景を眺望すると透明無色のと透明無色の純水の相互作用によって世界が灰色にひようへんするのである。無論コップにまんしている純水は八割方である。上方透明無色のコップのふちのかいわいは透明無色のままで背後の風景もめいちように認識できる。厳密には〈コップの側面は円筒状なので上方透明無色の箇所も二重の透明無色をけみしている〉のだがみずからの透明さは逓減されず背景がせんめいされる。ひつきよう透明無色のコップを灰褐色ならしめているのは直感的にはり透明無色の純水そのものである。ようなるべつけんして奇妙におもえる現象を証明するようにコップのだけの箇所には〈かげ〉がないが純水のまんしている箇所の側面には〈かげ〉がある。純水が埋没したの側面はグラデーション状に漆黒――灰褐色などではなくつつやみのような漆黒――へと変貌してゆくのである。またのコップをさいに仰視すると当然のことのようだがコップそのものの〈あつみ〉の部分はいずれも透明無色のままである。〈あつみ〉といって語弊があるのならば〈コップそのものの断面図〉といってもよい。いんの〈断面〉にも側面があるのでけつけつたる〈断面〉も側面へとむかって漆黒のグラデーションをなしている。ゆゑに乳白色の卓子のうえに鎮座せしめるとのコップぜんたいコップのなかの純水コップの断面図というようなそれぞれの視覚的構成要素が乳白色のキャンバスのうえに精緻にデッサンされた白黒の絵画のようにみえる。じようのコップとコップにまんした純水の視覚的要素そのものだが純水をまんさせて造次てんぱいもないコップには意想外に〈水滴〉がうかびあがるようなこともない。ゆゑに前述のように抽象画家のデッサンのように単純明快なる構造物にすぎない。重要なのは透明無色のコップと透明無色の純水の合致により前述のような〈かげ〉が構築されるために乳白色の卓子のうえにようなコップをしようりつせしめると乳白色の卓子の表面に〈かげ〉の〈かげ〉がうつる。透明な部分は透明なままにかげの部分はかげのままにひとつの〈かげ〉となるのだ。観察対象が元来透明であるがゆゑに〈かげ〉はより実体に肉薄した〈かげ〉である。 

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