【実践練習第6日目】一瞬を書く

○ルール 文章は一瞬を無限の文章にもできるし、百年を一行にまとめることもできる。此処では、一瞬のイメージをできるかぎり精緻に描写する。一瞬のイメージまでの物語を大事にごうする。


 ありきたりの世界のおわりの物語だ。

 ぎよう混濁の現代では何時那辺で怎麼生そもさん世界のしゆうえんほうちやくするかはわからない。綿めんばくたるすいかいなるいんせきの衝突でけんじんなる恐竜たちが絶滅したように人類も絶滅するかもしれない。くりの地球温暖化によってほうはくたる世界規模でほうはいたる疫病がまんして絶滅するかもしれない。こんかい就中なかんずくありきたりに最終戦争で人類は絶滅した。二十一世紀前葉の第三次朝鮮戦争をはつじんとして覇権国合衆国と中華人民共和国や西などの共産圏とのりゆうじようはくが勃発したのである。こんほうたる世界各国にてNBC兵器が濫用されて人類は疲弊していった。合衆国本土が西に核攻撃されるとはや怒髪天をついた世界的無政府主義組織のちようりようばつによっては無論世界各国の政府機関は瓦解してゆくことになる。ようにしてわたしたち全人類は最後のひとりをのこして絶滅した。最後のひとりはぼうばくたる世界中の激戦地からえんえん長蛇としてとんざんしてゆき大陸北端のひようびようたる砂漠にシェルターを構築していた。戦争はおわったようだった。せんじようばんたいの情報通信プロトコルを駆使したが生存者はほかにいないらしい。へいせんかいじんにきした世界には安全なる食糧もない。インフラが壊滅しているのでのみみずも見当たらない。イスラエルかいわいほうこうした最後のひとりは埃及えじぷとのマクドナルドのはいきよにてさいたる物音をそくぶんする。台所の蛇口から水滴がおちているのだ。きゆうきようひやくがいがみずにしていた最後のひとりはそんきよして蛇口のしたにこうこうをひらいた。白銀の蛇口の内部を一滴のみずが落下してくる。蚯蚓みみずしゆんどうするようなじよかんしたはやさで足跡をのこしながら墜落してくる。あんたんたるつつやみの蛇口のなかをぜんどうしてゆくと蛇口の出口にほうちやくする。旅人がずいどうをぬける様子で蛇口の出口にほうちやくした水滴はずいどうかいわいこうぼうに喫驚した旅人のようにてきちよくする。けつけつたる蛇口のくぼみにせんかいしているのだ。やがぜんどうの足跡をなしていた水分もほうして水滴は重力にめとられる。蛇口から脱出した水滴は一直線に真下へとこうしようしてゆく。蛇口からかいした衝撃でせんじようばんたいに湾曲する水滴は世界そのものを表面に明滅させているがゆゑに水滴そのものが世界であるようだ。あとは最後のひとりのぜつぽうをぬらすだけだ。最後のひとりはへいしており明滅しながら虚空を滑走した水滴は最後のひとりの背中に漆黒のしみをのこした。

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