第7話 冒険者ギルド7~この世界について説明を受けましょう~

 『ゴルゴン退治:場所、イーソの村近郊の湿地帯、適正人数 6人~、適正冒険者LV 5LV~、アコライト(侍祭)必須、経験点100、成長点30、報奨金5000G』


 そのクエスト用紙を見た僕は気絶しそうになった。

 僕の冒険者LVは1で適正LVは5。この差は大きい。それに向こうの世界の知識が通用するなら、確か石化するモンスターだったはず。こんな事に首を突っ込めるのか?


 「確か、ゴルゴンて石化能力があった筈では?」

 「勉強家ね。心配は無用よ。こっちにはなんたってフェクネスがいるから」

 「どういう意味です?」

 「彼女の種族スキルは『復活』。どんな状態からでも蘇生出来るという最強の蘇生スキルの一つよ」

 「それって、かなり反則気味のスキルじゃ・・・。それはともかく、このパーティーについて、教えてもらっていいですか?」

 「あなた、本当にこの世界の人間?まあ、いいわ。取りあえず、この世界について最低限の知識は必要ね」

 「よろしくお願いいたします」

 「まずは、この世界について。まさか、この地上が物質界、通称で人間界と呼ばれていることくらい常識よね」

 「・・・。全く」

 「はあ!とんだ拾いものね・・・。頭痛がしてきた」

 グネットさんは完全にやる気を削がれたようだ。


 「まずこの世界は天界、精霊界、物質界、魔界の4つから成り立っているわ。数え方で妖精界や冥界を加えることもあるわね。天界の説明はラフィ、お願い」

 「うん。私が適任であろうな。まあ一言で言って神々と私達天使族の世界だ。それ以上の説明はいるか?」

 「ざっくりし過ぎとは思うけど、まあそれ以上の説明は出来ないわね。次、精霊界ね。フェクネス、頼める?」

 「承知した。とは言ったが私もそんなに説明する事柄がないな。強いて言えば私のような精霊が住む世界だ、と認識してくれればそれでいい」

 「不死鳥族って精霊なんですか?」

 「妾も言って無かったか?」

 「はい。そんな事は一言も」

 「それは失礼した。妾も精霊の仲間に入るな」

 「そうなんですか。てっきり不死鳥族っていう一族があると思ってましたよ」

 「その認識は間違ってないぞ?ただ、不死鳥族は大きなくくりでいえば精霊族になる、というだけだ」

 「そうですか」

 「うむ。妾の説明不足だったようじゃの。グネット、これでよいか?」

 「ええ、十分よ。次はこの物質界ね。物質界には5つの大陸があるとされているの」

 「されている?」

 「まだ、未発見の大陸があるかもしれないからね。丁度、東西南北に分かれている事から、東大陸は別名を大和大陸なんて呼ぶわね、西大陸、北大陸も別名を氷河大陸なんていうわね、南大陸、そしてここ、都市国家ミネルヴァがある中央大陸の5つね」

 「へー」

 「魔界はゴクレン、貴女が適役よね」

 「確かに妾が適役であろうな。見ての通りの、まあ普段からそなた達人間が想像しているイメージとそんなかけ離れたものでもないぞ。現に妾も死神の格好をしておるし責められても仕方ない。妾の主要武器は大鎌だしの。角の類はある者と無い者がいるから、判別には無駄じゃぞ。隠している者も妾の様におるからの」

 「そんなものですかね?」

 「そうじゃぞ?人間界に降りてきている者で冒険者稼業をしている魔族なんて、妾だけじゃろうからな・・・」

 「人間界はあなた達、人間族の方がよく分かっているでしょうね・・・。人間界の人口は9割を人間族が占めているのだから」


 「ついでに、この世界の種族について説明した方がよかないか?」

 「それもそうね。じゃあ、もののついでだし、そうしますか」

 グネットさんとゴクレンさんの間で共通認識が出来たようだ。だが、これって僕がかわいそうな子、決定じゃないのか?



 「まず、私ね。人間族は省いていいわよね。なんてったって貴方がその人間族なんだから。一応の注釈を加えておくと、人間界の約8~9割は人間族と言われているわ。次は私、竜人族ね。一応はこの物質界に住んでいるのよ?ただ、里を降りて人間に交わろう、という物好きがあまり居ないだけで。冒険者稼業なんてやっているのは私くらいよ。頑強な肉体と自分で言うのも何だけど、相対的に見て高い知力・知識を誇っているわ。寿命は2000年以上よ。ちなみに私は人間の尺度で言うと女性だけど、竜人族は人間に変身する魔法を行使した時、必ず女性型になるの。これは、竜人族が人間の女性に近いからだと言われているわ。ちなみに、私の本体、竜形態だと全長約20Mあるの。これは、竜人族としては大きめの方よ。次はドワーフ族。彼らは根っからの職人ね。鍛冶師として、お世話になったんじゃない?」

 「ええ。最初の装備選びの時に大変お世話になりました」

 「でしょうね。彼らはいたって温厚で頑固で職人肌だけど、一度武器を持てば勇敢な戦士に早変わりよ」

 「まさに、ドワーフって感じですね」

 「次はエルフ族よ。オルフィーナ、お願い」

 「ああ、まあそちらの常識では知らんが、我等は森の番人だ。故に、森の加護を受けている。また、総じてエルフ族は精霊魔法の素質を持っている。寿命は1000年を超える。これが、この世界でのエルフ族の常識だ。ただ、同じエルフ族だが、ダークエルフ族は違うぞ。これは、本人から話してもらった方が速いな。グレニーナ。出番」

 「承知した。ダークエルフ族はエルフ族と違い、精霊魔法の素質はない。その代わりに魔法の素質を与えられている。また、ある程度の戦闘が出来るくらいの身体能力を有している。その為、生まれによるが、アサシン(暗殺者)を生業とする者も少なくない。最も、あまり人間社会に関与しないのは、エルフ族特有の特徴だな」

 「あと、物質界に存在する種族は数少ないけど、自動人形族ね」

 「自動人形?」

 「かつて、古き良き古代文明時代の技術の結晶とも呼ばれているわね。数は少ないけど、今でもどこかで生産されている、と聞くわ。種族としても絶対数が少ない上に修理と点検を必要とするから、彼女達にとっては住みにくい時代よね」

 「彼女達?」

 「何故か、自動人形族は女性型しかいないの。今でも、理由は分かっていないわ」

 「自動人形ですか。会って見たいものですね」

 「そんな大したことはないんだけど。」

 「後は、フェクネスの様な精霊族(不死鳥族)やラフィの様な天使族か。ラフィ、お願い」

 「まあ、いいが・・・。私が説明するのか?」

 「駄目かしら?」

 「説明するところがなくて困っているのだが」

 「その、当たり前の説明が必要なんだから、いつも通りにお願いするわ」

 「相分かった。天界の説明の時にも少し出てきたが、天使族というのは人間達が想像しているものとは若干違う。善人だから天界へ行けるのでは無く、死亡したから天界へ運ばれるのだ。その役割を私達、天使族が担っている。そして、誤解しているかもしれないが、魔族とは敵対している訳ではないぞ」

 「えっ?」

 「元々は、我らが人間界で魂の番人、魔族はその魂を輪廻の円環に乗せる役割をお互いに担っておる。これでも、敵対するというのは只の阿呆じゃ」

 「それはそうですね」

 「うむ。だから、魔族とは一定の協定を結んでおる。破ったらかなりの厳罰ものじゃ」

 「そんな事まで」

 「そうじゃ。これで、だいたいの主要な種族の説明は済んだんじゃないのかえ?」

 「そうね。今度はクエストについて検討と説明をしましょう」


 『ゴルゴン退治:場所、イーソの村近郊の湿地帯、適正人数 6人~、適正冒険者LV 5LV~、アコライト(侍祭)必須、経験点100、成長点30、報奨金5000G』

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