序章 神様という中間管理職

序章 第1話~時空間の間~

  「僕は死んだのか?」

 そこは、真っ白な世界で足元も頭上も果てが無い。浮遊感があり、自分という感覚も無い。(というか、現実感が皆無だ。)

 「その通りだ。馬鹿者!」

 浮遊感を堪能たんのうしていると、上から声がした。

 「こっちだ。どこをみている」

 その方向を見ると、肩から古代ローマ風のケープを身に纏った男性がこちらを見て手招きをしていた。

 だがそこは、まるで裁判所に近い感じの印象を受けた。違いは裁判官席しか無い事と、席の机の上に山積みにされた書類(?)らしきものだ。

 目の前で、その男性は天秤に白い重りと黒い重りを積み上げていた。反対側には、謎の物体が鎮座していた。

 「さっさと来ないか!馬鹿者!」

 なんか、先程から理不尽な言いがかりをつけられているような気がするのだが・・・。

 取りあえず、彼の言う通りに反対側に座る。こうして見ると本当にテレビで見る、裁判所そっくりだ。弁護士の席も検察官の席も無いけど。

 「私の名前はロキ。これでも一応、神族だ。お前の名前は麻生誠司。人間族。16歳。間違いないな」

 「はい。そうです。」

 「貴様は死んだ。死因は・・・自動車事故・・・。何も変哲もないな。だが、この重りを見ろ。さっきから、いくら貴様の罪悪と善行を積んでもバランスがいっこうに崩れない。こんな事はあってはならんのだ。」

 「そんな事を言われても、僕のせいじゃないですよ。ちゃんと調べて下さい。」

 「そんなことはいちいち言われなくとも分かっている。こちらにも貴様の世界で云う所の警察みたいな部署はある。貴様が特別なのだ。」

 「どういう事です?」

 「普通、この天秤に重りを乗せればその人物の善悪が分かるようになっている。しかし、貴様にその節理が働かない。これはどうしたことか・・・。貴様は普通では無い、ということだ。簡単なことだろう?」

 「で、僕はどうすれば・・・」

 「この天秤がが役に立たない以上、転生してもらうより他ないな。これで、また始末書だ。貴様等、人間の所為だぞ。バカバカ死にやがって。もう少し、命を大切にせんか。」

 「あの、神様にも始末書あるんですね。ご愁傷さまです。で、僕はどうすればいいんですか?」

 「選択肢は3個ある。1、現代に戻ってどこかの家庭の赤ん坊になる。2、異世界に転生して、どこかの家庭の赤ん坊になる。3、異世界に転生して、今の時間から生き直す。どれがいい?どの選択肢を選んでも記憶を保ったまま生き直す事は可能だぞ。」

 僕は少し悩んで、

 「3、異世界に転生して、今の時間から生き直す。これでお願いします。」

 「分かった。目覚めたら、そこは今までとは別世界だ。油断して、また死ぬなよ?」


 魔法陣に吸い込まれ、周りの景色がホワイトアウトしていって、僕は意識を失った。

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