第233話 驚異
もはや上へのルートを諦め気味の紋次郎とアスターシアたちであった……
「もう、上に行くのは諦めて、クロートスのお姉さんを探すことにしようか」
紋次郎がそう言うと、アスターシアも同意する。
「そうですわね、それが良いですわ、無理に合流する必要なんてないですもん、紋次郎には私がいればそれでいいのですわ」
他の連中が聞いたら怒りそうなセリフであるが、紋次郎は少し微笑むだけでその言葉を流し聞いた。
合流を諦めた紋次郎たちであったが、すぐにそれを邪魔する存在が現れる。紋次郎は異様な殺意に気がつき、すぐにその場から跳躍して飛び離れる。
紋次郎のさっきまでいた場所に、青白い光の矢が突き刺さる。
「ほほう……人間のクセに感がいいようだな」
鈍く気味の悪い声が聞こえる。声の方を見ると鷹の頭と像の頭の二つの存在が浮遊していた。
「さっき倒した黒豹頭の仲間のようだけど、もう、邪魔しないでくれるかな」
紋次郎のそのセリフを聞いて、二人の旧約悪魔は反応する。
「なんと……ジュルダークを倒したのはお前か、それはそれは都合が良い、敵討ちというわけではないが、旧約悪魔の汚名を返上しようとしよう」
そういうと、二人は戦闘態勢をとった。紋次郎はクロートスの姉さんを探しに行きたいので、さっさと障害を片付けることにした。
鷹の頭の手の爪が赤く光る、そして恐ろしいスピードで紋次郎との間合いを詰めた。しかし、その脅威的なスピードにも、紋次郎は余裕で反応する。爪の一撃を簡単に避けると、剣を一振りしてその赤く光る爪を腕ごと切り落とした。
「ぎゃーーー!!」
鷹の頭と同時に、像の頭の旧約悪魔も紋次郎に体当たりしようとしていた、しかし、その攻撃も読んでいたのか、紋次郎はその突撃も横に避け交わすと、水平に剣を振り、像の頭の大きな体を真っ二つに切り裂いた。人間の剣技ごときに斬られるとは露ほども考えていなかった像の頭は、驚きと驚愕に、叫び声すら挙げれず消滅する。
腕を切り落とされた鷹の頭は、像の頭が倒されたのをみると、恐怖が湧き上がってくる……人間という自分より遥かに劣った存在が、驚異の力を見せているこの状況が信じられず、混乱し、そしてあまりのも状況が理解できず、その場から逃げ出そうとした……
紋次郎は、逃げ出そうとした鷹の頭の前に回り込み、素早く剣を振るって、鷹頭の残った腕も切り落とした。
「ぎゃああーー!! 助けてくれ……命だけは……」
圧倒的な力の差に、追い詰められた鷹の頭はそう懇願していた……
「いいだろ、助ける代わりに教えて欲しいのだけど、ここに女性が一人、捕らえられてるはずだ、その子の居場所を教えてくれるなら命は助けるよ」
鷹の頭の旧約悪魔はすぐに答えた。
「こ……この下の階に確かいるはずだ……その奥の階段を降りた先にいるはずだ……」
「本当に?」
紋次郎は旧約悪魔の言葉に疑いを持ったのかそう聞き返した。
「う……嘘じゃない! 本当にこの下にいる……」
「じゃあ、案内してもらおうか」
そう言うと、鷹の頭はあからさまに慌てふためく……
「ちょっと待て! 本当はそんな女のことなんて知らないんだ! しかし、誰かを監禁しているとすれば、この下のフロアーしか考えられん、調べればわかるはずだ!」
「そうか……まあ、それは嘘じゃないみたいだな」
紋次郎がそう言いながら鷹の頭を睨み付けると、あまりの恐怖に鷹の頭は錯乱する……
「うわ!! くっ……貴様、お……俺を殺す気だな……助ける気なんてねえだろ! くそ! 死んでたまるか!」
そう言って紋次郎に襲い掛かった──紋次郎は襲い掛かってきた鷹の頭を、真上からの剣の一振りで斬り裂いた。
「本当に命は助けるつもりだったのに……」
「紋次郎、どうするですの、信じて下を調べるですの」
「そうだね、他にあてもないし下のフロアーを調べてみよう」
と言うことで、俺たちは下のフロアーへ行くために階段を探した。幸いなことに階段はすぐに見つかり、躊躇なくそこを降りていった。
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