第227話 魔族との戦い

その雰囲気は、このフロアーに来た時から感じていた。大きな力の気配・・やはりというべきか、目の前には、20体ほどの魔族が現れた。


「おおおっ、なかなか強そうな魔族があんなにおるで、腕がなるなアルティ」

「腕なんてならないわよ。あれ、どう見ても最上級の魔族ばかりよ・・」


「どうする・・固まって戦った方がいいかな・・」

「そうですね・・バラバラだと危険かもしれません」


俺たちは、そう考えていたが、不幸にも、最初の魔族の攻撃で足元を崩された。アルティとマゴイットは、攻撃を避ける為に、そのフロアーの東側に跳躍して、スフィルドとリンスは西側に跳躍する。そして、俺は、足場が崩れたことによって下へ落ちていくクロートスを助ける為に、そのまま一緒に下のフロアーに落ちていった。それを見てアスターシアは飛んで俺たちを追ってくる。


すぐに他のメンバーも、穴の下へと飛び込もうとするが、立ちはだかる魔族がそれを許してくれなかった。



かなり下へと落とされてしまった。クロートスはなんとか落ちる前に抱きかかえる事が出来たので、大丈夫そうである。だけど、周りを見渡すと、決して良い状況ではなかった。広い部屋の真ん中に落ちたのだけど、その部屋には、多数の魔族が待ち構えていた。

「紋次郎・・魔族がいっぱいですわ」

「アスターシア・・クロートスを頼むね」

そう言って俺は、剣を抜き構える。


アスターシアは、紋次郎にクロートスを任されたが、せめて支援だけでもと、魔法を唱える。それはアスターシアの超級支援魔法、英雄強化ヒロイックブーストであった。俺のステータスが信じられないレベルで上昇する。


俺には神道と呼ばれる特殊な能力で、一心三英傑いっしんさんえいけつと呼ばれるスキルを持っている。これは単純に実際のレベルの三倍のステータスが反映されるという、超強力なものである。


現在の俺のレベルは120・・そう、ステータスだけ見れば、レベル360相当の強さがあるのである。それに英雄強化でさらに強化され、さらに俺の持つ剣はゴット級の魔法剣で、強力なステータスアップなども付与されている。もはやどれくらい強化されているのかわからないくらいなのに、そこへ俺はターボのスキルを発動する。


上級魔族は、人間の数百倍の動体視力があると言われている。その上級魔族ですら、今の紋次郎の姿を、残像でも捉えることはできなかった。


最初に、グアヴァスという魔族がこの世から消し飛ぶ。まさにそれは消し飛ぶという表現が正しい。仲間の一人が消し飛んだ後も、他の魔族たちは、状況を理解していなかった。次に、キラジナという魔族が消し飛ぶ。それでも、何か異変を感じる程度の変化でしか気がついていなかった。その次はロブランティという魔族が蒸発する。その熱風は部屋を舞って、その時、やっと魔族たちは、何かの攻撃を受けていると認識した。


三つの魔族が滅ぼされるのに、一秒も経っていなかった。気がつけば、仲間の魔族の人数が減っていたのだ。すぐに魔族たちは、反撃に移ろうとした。だが、その意識を持った瞬間、さらに二つの魔族が消滅する。


基本、恐怖など感じない魔族が、この状況に、何か本能の奥底にある、危険を感知するものが、最大級の警告を鳴らしていた。何とか、対応しなければいけないのだが、その滅びを振りまいている敵の姿すら捉えることができないでいたのだ。


そこで、魔族は、見るものに攻撃を加えようと考えた。それは部屋の隅でじっとしているクロートスであった。魔族の一人が、無詠唱で強力な火球を作り出すと、それをクロートスに向けて投げつけた。直撃の寸前で、その火球は破裂して吹き飛ぶ。それは紋次郎に、クロートスのことを頼まれた、妖精王の仕業であった。


クロートスに火球を投げつけた魔族は、首と胴体が別々に消滅するような攻撃を受けて、消し消えた。


魔族たちは、キョロキョロと周りを見渡し、自分たちを屠る者の動きを捉えようとした。そうしている間にも、一人、また一人と消し去られていく。


不意に部屋の中央に、紋次郎が姿を表す。そのチャンスを逃さぬように、その部屋にいる魔族が、一斉に紋次郎に襲いかかる。しかし、それは敵を一掃する為の、紋次郎の戦法であった。紋次郎に向かってくる敵に対して、全方位攻撃の斬撃を繰り出す。それは今、この時、楽して敵を一掃したいという思いで生まれた、思いつきの攻撃であった。紋次郎は自らの体を回転させながら、さらに円の動きで動く。それは強力な刃を持つ竜巻のようなもので、周り全てに、強烈な剣撃を与える。


その竜巻に飲み込まれていくように、近く魔族が次々と消し飛ばされていいく。最後の魔族が、その竜巻から逃れようと、その場にとどまると、回転を止めた紋次郎が、その魔族の前に現れて、一刀両断で斬り伏せる。


この部屋にいるすべての魔族を倒した紋次郎は、軽く微笑むと、クロートスとアスターシアの下へと歩いていく。


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