第226話 総帥の焦り
メキドの本部、深い地下の広い部屋に、六つの影が浮遊していた。その影の下に、二人の男が近づいてくる。一人は、メキドの総帥であるズオルド、もう一人はその部下であるジュニオと呼ばれる魔族の男であった。
「旧約悪魔たちよ。ここに敵が近づいている。今こそお前達の力を見せる時が来たのだ」
ズオルドがそう話しかけると、六つの影の一つが話し始める。
「我らが出なければいけない敵・・・そんなものは存在しない。そこの魔族の坊やで十分じゃないのか」
それに続いて、別の影も話し始める。
「そうだな・・我らの敵は神族のみ。人や魔物など相手にするのも面倒くさい・・」
「ところが、敵の中に神族がいるようなのだ。それを聞いても戦わないのか旧約悪魔よ」
「・・・・・なるほど。それは聞き捨てならないな・・ならば、我らの中から一人・・手を貸そう」
一つの影はそう言うと、影の一つが地に降りてくる。そしてその影は、ウニャウニャと動くと、体が実態化していく。実態化したその見た目は、黒豹のような顔の獣人の姿であった。
「このジュルダークが神族を血祭りに上げよう」
ズオルドの本音は、旧約悪魔全てに手を貸して欲しいと思っていたが、ジュニオが率いる、強力な魔族たちもいる・・まずは一人でよしとした。
まさか、あの紋次郎たちが、ここを襲撃してくるとは思ってもいなかった。何が目的なのか・・だが、それも無視しておくわけにはいかなった。その勢いは凄まじく、すでに地下四階層まで迫っていたのだ。
「ジュニオ。ジュルダークを連れて、敵を迎え撃ってくれるか」
「わかった。だが、旧約悪魔の力など借りなくても、我ら魔族で十分だと思うがな」
「紋次郎を甘く見るな、奴は女神の加護があるとの情報もある」
「ほほう・・それは楽しみだ」
そう言ってジュニオはその場を静かに去る。
「なんや、勢いで突入したけど、今のとこ、たいしたことないで」
マゴイットの言葉に、紋次郎が答える。
「いや、油断しない方がいいよ、マゴイット。まだ、魔族も、旧約悪魔も出てきてないだろう。多分本番はこれからだよ」
「そやな、これで終わりやったら物足りんわ」
マゴイットの期待には、この後、嫌ってほど答えてもらえるのだけど、それはちょっとお釣りがくるくらいの手ごたえのある相手であった。
ポーズは、天馬艇で急いで事務所まで戻ってきていた。すぐにみんなを集めて、事情を話し始めた。
「それは、すぐにいかない危険だな」
アズラヴィルが、ポーズの話を聞いてそうすぐに発言した。
「いや、援軍が行くまで、殴り込みはしないから大丈夫だと思うぜ」
ポーズは素直にそう言うが、アズラヴィルは否定する。
「いや・・紋次郎のことだ・・なんだかんだ言って、突入することになってると、僕は思うぞ」
「そうね、私も、もう突入しているに賭けてもいいわね」
デナトスも同意するのを聞いて、ポーズはどんどん心配になってくる。
「確かにあのバカ主のことだ・・・そうなっててもおかしくねえな・・やべ、急いで援軍に行くぞ!」
とりあえず、戦闘力の高い、アズラヴィルを始めとして、ファミュやミュラーナ、アテナやリリス、ヴィジュラなど戦える者は援軍で駆けつけることになった。
フィスティナを中心に、新人やメイルなどはそのままダンジョンの営業を続けてもらうことにした。ダンジョン閉めても、全員で行った方がいいという意見もあったけど、さすがに天馬艇に乗り切れないのと、すでにダンジョンに幾つかの冒険者のパーティーが冒険中なこともあって、営業は続けることになった。
敵のアジトへ天馬艇ですぐに向かうのだが、天馬艇を操縦するポーズを、リリスやデナトス急かせてちょっかいをかける。それを嫌がりながらも、なんとか天馬艇を動かした。
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