第217話 妬み嫉み
紋次郎の新ダンジョンの直ぐ近く、かなり大きな規模のダンジョンの運営事務所にて、数人の男が話をしていた。
「ユルア山にあった城あったろ。あそこに新しいダンジョンができて、かなり評判がいいみたいだぞ」
「それでか・・うちのダンジョンが閑古鳥が鳴いているのは・・・」
「なんでも報酬ドロップがかなり良いみたいだ。難易度が高くて全滅もよくするらしいが、それでも挑戦する価値があるみたいだぞ」
「むかつくな・・・うちの客を取りやがって・・」
「まあ、あれだ、いつもの感じで対応するか」
「破壊屋か?」
「おい。聞かれたらどうするんだ。その単語を気安く発するな」
「悪い・・・」
「とにかく、俺の方から連絡をしておく」
「お前がどこかへ連絡すると、なぜかユルア山の新しいダンジョンは閉店することになるんだろうな」
「そういうことだ」
そう言って男たちは薄ら笑う。
☆
「大繁盛だ! 今週だけで200組は挑戦してくれてるね」
「そのうち全滅は180組、かなり儲けが出てるな」
「階層の移動での難易度アップがいい感じに機能してますね。前の階層を楽にクリアーしたパーティーが、調子に乗って、その先の階層まで行ってしまうことで、そのまま全滅してくれるパターンが多いと思います」
「やるじゃねえか主、それも読んでたのか?」
「ふっ・・当然だよ」
「すごいねお兄ちゃん。そんな深く考えてたんだ」
「・・・ごめん。嘘です。そんなとこまで考えてません」
紋次郎は、罪悪感に押しつぶされて、正直に言う。
「とにかく全滅は多いけど、ボス討伐でのドロップが豪華って話が広まってるみたいで、みんな一攫千金を狙って挑戦してくれるから助かるね」
「そうですね。やはり良い魔法装備を製作してくれている、メタラギとデナトスたちの手柄でしょうか」
「俺はスタッフ全員に感謝してるよ」
紋次郎がそう言うと、みんな照れたように微笑む。
魔法水晶を見ていたフィスティナが、驚きの声を上げる。
「紋次郎様。あれを見てください」
少し慌ただしいその言い方に、リンスやポーズも魔法水晶を覗き込む。
「おい・・あれはジアンディのパーティーじゃねえか・・・」
それは城の入り口の映像で、五人組のパーティーがこのダンジョンへ入ってきているところであった。話を聞くと、このパーティーの先頭の男は超有名人のようで、ファミュとかと同じ、伝説級冒険者だそうだ。
「同じ伝説級ですけど、私より遥かに格上の冒険者ですよ」
ファミュがそう言うくらいだから、相当の実力者なのだろう。
「ダンジョンの知名度が上がれば、ジアンディのような超一流の冒険者もやってくるのは必然でしょう。現在、トップレベルの冒険者が相手で、このダンジョンがどの程度通用するか見るのは楽しみではありますね」
リンスの話には共感できる。ファミュより格上の冒険者が、うちのダンジョンで、どんな冒険をしてくれるか、俺はワクワクしていた。
ジアンディのパーティーは、当たり前のことだけど、彼以外のメンバーも超一流であった。ヴァルゾは漆黒の戦士と呼ばれる伝説級冒険者で、ジアは一心の穹手の名を持つ、伝説級冒険者。シュレムは千魔と呼ばれる、英雄級冒険者の魔導士で、ラアムは癒しの聖女の異名を持つ、英雄級冒険者のクレリックであった。
平均レベルは200は超えているだろう・・それだけの強敵である。当然のように上層、五階層まで、何の障害も感じずに、到達していた。五階層のボスはグワドンであるが、さすがに今回は相手が悪いかもしれない。
ジアンディはグワドンを見て、首をかしげる。
「かなりレベルの高いダンジョンだと思っていたが、最上階のボスがティタンの巨人か? 少し拍子抜けだな」
ヴァルゾはそんなジアンディの言葉に、軽く反論する。
「楽でいいじゃねえか。軽く倒して、宝をいただこうぜ」
完全に油断しているジアンディたちに、グワドンの
さすがにヒーラー不在では不便なので、ジアンディは回復の魔法でラアムを癒す。ジアンディはクルセイダーと呼ばれるクラスで、近接戦闘をこなし、そして神聖魔法も使用できる聖戦士であった。
ジアンディの回復魔法で、ラアムの意識が回復する。だが、グワドンが大きなハンマーを振り回しながら、ラアムに迫っていた。そこに割り込むように、漆黒の戦士が躍り出て、グワドンのハンマーを弾き飛ばした。だが、その威力でその戦士も反動で吹き飛ばされる。
「どうも普通のティタン族ではないようだな・・・」
グワドンの力を見誤っていたことを悟ったジアンディは、本気の戦闘スタイルへと移行するように、パーティーに指示を出した。
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