第214話 宝箱や罠を設置しよう

新人歓迎会も終わり、本格的に新ダンジョンの準備を進めることになった。ここからは人出が増えたので、さらに作業を分担して、効率よく進めていく。


「今日は午後から天然ダンジョンでモンスターの捕獲して。それまでは宝箱や罠の設置場所を確認してみようかと思ってる」


「わかりました。では私もお供いたします」

リンスは秘書らしく、俺に付き添うことが多いのだが、今は秘書が二人いる。フィスティナも同じようにこう言ってくる。

「それでは私もご一緒いたします」

「あっ、フィスティナは事務所で事務処理をお願いします」

リンスがそう言うと、フィスティナが反論する。

「できれば、紋次郎様の仕事内容をまだ把握してないので、ご一緒して確認したいのですが」

リンスがそれに反論しようとしたけど、このままだと揉めそうなので、俺が言葉をかける。


「そうだね、今日はフィスティナも一緒に行こうか」

俺がそう言うと、リンスも渋々了承する。


まずは城の一階層をポーズと回りながら、罠と宝箱の設置を考えていく。

「ポーズ、あそこの入り口に、何か罠を設置できないかな」

「そうだな、一階層だから、石つぶてとか丁度いいかもな」

「罠の奥に宝箱を置いて、ランク1くらいの報酬を設置して・・」


そういえば、宝箱や、ボス撃破の報酬をランク化して、わかりやすく管理することになった。ランク1は宝としては最低ランクで、レアリティの低い触媒や、薬草などの安いアイテムがそれに含まれている。


午前中はそんな感じで一階層、二階層と回っていき、お昼になったので、食堂でソォードの作った昼食をいただく。今日は厚切りハムのサンドウィチだった。かなり美味しかったので三つも食べてしまった。


午後は、アルバタの天然ダンジョンに、モンスターのスカウトに向かう。リンスとフィスティナ、リリスとアズラヴィルが同行してくれた。それとは別に、道案内で魔神アレイスを連れていく。彼はアルバタに長く住んでいたので、ダンジョンの奥も熟知しているそうだ。


「我が主よ、この奥に、ライトニング・スキュラなる魔獣が住んでおります」

それを聞いたリンスが、その魔獣の説明をしてくれる。

「スキュラは半獣で、レベル200前後の高レベルの魔物ですね、ライトニングの名が付いているってことは、その亜種だと思われます。もしかしたら、通常のスキュラより、さらに上位のモンスターかもしれません」


天然ダンジョンであるアルバタに、近所に散歩に行くようにやってきているこの状況に、フィスティナは少しパニックになっていた。


「ちょっと皆さん、待ってください。ここはアルバタの天然ダンジョンですよね、この人数で、何の準備をしないで・・ちょっと無謀じゃありませんか?」


確かにここは高難易度の天然ダンジョンである。英雄級冒険者のパーティーが簡単に全滅する怖い場所だけど・・

「まあ、今日はそんなに奥まで行かない予定だから、大丈夫だよ」

紋次郎が軽くそう説明するが、フィスティナの真っ青な顔は変わらない。


「何をそんなにビビっておる。アズラヴィルと紋次郎が居れば、多少のことでは危険はないぞ」

リリスがそういうが、アズラヴィルや紋次郎の戦闘力を知らないフィスティナにとっては、ライオンの檻の中に、迷い込んだ子供のような気分であろう。


魔神アレイスの案内する場所に、ライトニング・スキュラが佇んでいた。このモンスターは上半身が女性型のモンスターで、下半身はいくつもの獣の体と首を持つ、威圧感たっぷりのモンスターであった。


「中々いい感じの魔物じゃないか、レベルも230はありそうだね」

アズラヴィルがそう感じた感想を述べる。レベル230と聞いて、フィスティナはさらに震え上がった。


「伝説級のモンスターじゃないですか・・・死んでしまいますよ・・」


心配するフィスティナに、大丈夫だからっと言って、俺はそのスキュラに近づいた。そして話しかける。

「こんにちは」

「・・・なんだ人間・・死にたいのか? うむ・・そこにいるのはアレイスか・・なぜ人間などと一緒にいるのだ」

「そのお方は我が主だ。お前ごときが殺せる御仁ではないぞ」

「ほほう。アレイスが主と認めるとは・・それで、その御仁が私になんのようなのだ」

「アレイスがうちで働いてくれることになったんだ。もっと強い魔物の力が必要だから、君もどうかと思ってね」

「なるほど、強者を望むか・・・ならば私を望むのは必然か・・して、その見返りは何だ」

「三食昼寝付き!」

「なるほど。食を保証するといのだな、よかろう、面白そうな話だし、私もお主に元へ参ろう」


レベル230の伝説級モンスターを簡単に説得するのを見て、フィスティナは驚きを通り越して、混乱していた。実はとんでも無いところに就職してしまったんじゃ無いだろうかと思い始めていた。

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