第215話 魔法装備の量産
メタラギは、大量の鉱石を目の前にして、興奮していた。この全ての宝の山を、自分の手で、溶かして、固めて、叩いて、伸ばすとやりたい放題だと思えば、まさに喜びで心が震えてくる。
「ヒュール、最初はミスリル鉱石の溶解から始めるぞ」
「はい、師匠!」
師匠という響きに、多少の喜びを感じつつ、メタラギは装備の作成にかかった。その作業スピードは恐ろしく早かった。それを見ていたヒュールは、その効率の良さと手際の良さに感心していた。
どんどん出来上がる装備は、デナトスの作業部屋へと運ばれた。ここでマジックエンチャントが行われる。
「フリュド、加工した宝石をそこに用意して」
「はい。デナトスさん」
「まずはミスリルアーマーからエンチャントするわよ」
ただでさえ高価なミスリル装備である、エンチャントに失敗して、装備を台無しにするわけにはいかない。デナトスは慎重に作業を進める。さすがにエンチャントする数が多いので、フリュドもその作業に加わった。フリュドの手際を見て、デナトスは深く頷く。あれならば任せても大丈夫と判断した。
大量に生産された魔法装備を見て、リンスやフィスティナが感嘆の声を漏らす。
「すごい・・これだけの魔法装備・・売ればどれくらいになるか・・これ、全部、冒険の報酬にするんですよね」
「そうだよ。直で売れれば楽なんだけどね・・」
「これって絶対、ダンジョンの売りになると思うんですよね。もう少し、この報酬を宣伝してはどうですか」
フィスティナのその意見を聞いて、確かにそうだと、今更ながら思った。
「よし。それじゃ、ダンジョンギルドの宣伝用の掲示板に出しておこうか」
メタラギたちが作りだした装備には、ラグリュナ級の魔法装備も含まれていた。人の作り出せる最高ランクの装備で、一つの部位だけで、城が一つ立つくらいの価値が有る。なのでこう広告には掲載する。
『【ダンジョン新装開店】魔法装備、多数大放出中。あの、ラグリュナ級装備もドロップする!』
これで高レベルの冒険者が殺到するだろう。
報酬は、ボスの宝箱からランダムでドロップするのだけど、その確率を魔法で設定することができる。この排出率はダンジョン人気を左右するくらいに重要であった。
「ラグリュナ級装備は、さすがに底確率にしないとダメだね」
「そうですね、しかも、地獄級のボスでしかドロップしないようにしないと」
あまり簡単に良いドロップをさせると、さすがに収支が合わなくなってしまうので、ギリギリ、儲けを考えれるくらいに、良いドロップする設定ってのが理想的である。だけど、それが中々難しい。
ラグリュナ級の装備はさすがに数えるほどしかないので、地獄級のボスドロップのみにした。その確率も2%と抑え気味に設定する。
「てかよ、地獄級ってどれくらいの想定レベルなんだ」
ポーズがそもそもな質問をしてくる。
「200前後で考えてるけど」
「おいおい・・そんな高レベルだと、クリアーできるパーティーなんて数えるほどしかないぞ、そんなに渋んなくていいんじゃねえか」
「確かにそうだけど、それでも簡単にドロップしたら面白くないじゃないか」
簡単に最強クラスの装備が手に入るなんて、そんなのクソゲーである。やはり、苦労してドロップした時の喜びを感じてほしいからね。
アイテムのドロップ設定もそうだけど、その前に各階層のボスも割り当てないといけない。それも中々難しかった。
「一階層のボスは、デナトスの作ったゴーレムあたりにすればいいと思います」
「そうだな、二階層も生成したモンスターでいいだろう、ネクロマンシーで生成したデスナイトとか、その辺のクラスで十分だな」
「三階層、四階層はアルバタで確保したモンスターのどれかにお願いするとして、五階層はどうする?」
「そうだね、レベル帯的にグワドンがいいと思う」
グワドンもかなり成長しているので、グワドン用装備を身につければ、五階層のボスを十分やっていけそうであった。地下のボスは、魔神アレイスやライトニング・スキュラ、そしてケルベロスのダッシュを考えている。
こうして、新ダンジョンの準備も完了に近づいていた。あとは営業を開始して、様子を見て、微調整すればいいだろう。なので、開店日を三日後に決定した。
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