第207話 新ダンジョン運営作戦

人の気持ちとはわからないものである。なんだかんだと言っても、ヴィジュラとラスティルは夫婦ぽくなっていく。幽霊であるラスティルを除霊できなかったけど、まあ、これはこれでアリなのかな・・


幽霊問題が解決して、本格的に、新ダンジョンの営業を開始する為の準備を開始した。まず、城までの道を整備した。ユルア山の麓から、最短ルートで城までの道を作り上げた。12時間かかった道のりを、橋やトンネル、そして階段を設置して、1時間ほどでこれるようにした。これで辺鄙な場所であるデメリットは完全になくなった。


城には、ゴーストやレイスなど、多くのアンデットが住み着いていた。とりあえずダンジョンコンセプトに合わないので、それを一掃することにする。無数にいた、それらのモンスターも、パワーアップしたメイルと、闘気の扱いに磨きのかかったファミュの二人だけで、わずか数時間で片付ける。


城の地下4階層には、7体の上級巨人が住み着いていた。こちらに従う意思が無いようなので、デナトスとミュラーナで早々に退治をした。城の最上層部には、どこかの誰かが召喚したと思われる、エルダーデーモンが野生化していたけど、これはリリスの一言で、簡単に彼女に従属した。


住み着いていたモンスターが一通り片付き、城の改修作業に入った。ここでは、新加入のアモンが、魔界の大工としての腕を遺憾なき発揮する。全フロアーを、罠や仕掛けを設置しやすく変更して、壊れた壁などを修繕する。


一番、揉めたのは、従業員の宿泊エリアの改修であった。みんな自分の部屋のことになると、好き勝手言い始める。

「どうして私の部屋が、こんな犬小屋みたいなのですの!」

アスターシアが自室を見て、文句を言う。

「何言ってるのよ、あんたにはそれで十分広い部屋でしょう」

確かに妖精のアスターシアからみれば、十分な広さには見えた。


「私の大きさなんって関係ないですわ。私もみんなと同じくらいの広さがいいですの!」

確かに体が小さいからって部屋の大きさが変わるのは可哀想ではある。

「みんな平等でいいんじゃない。面積には余裕あるでしょ」

俺がそう言うと、アスターシアが満面の笑みで、抱きついてくる。


「あの・・私の部屋にはシャンデリアをつけてくれませんかね・・」

ソォードがまた訳のわからないことを言い出した。俺たちはそれを完全に無視する。


ヴィジュラ夫妻の部屋は、二人分なので、倍の大きさの部屋を用意した。ここで幸せな新婚生活を送って欲しいものである。


全員分の部屋と、みんなが集まれる食堂とリビング。そしてダンジョン運営の会議室と応接室など、今までにないほどの充実度であった。


充実した施設や部屋の中でも、俺が一番気に入ったのは、二つの温泉であった。二つの温泉は、それぞれ違った魅力があった。裏の庭園にある温泉は露天風呂になっていて、庭園の自然を満喫しながら温泉に入れる素晴らしいものであった。城の地下にある温泉は、洞窟風呂で、薄暗い洞窟内にあって、その静けさは落ち着きをもたらしてくれそうだった。


建物の改装は終わったけど、モンスターや罠の設置、ボスモンスターの配置など、考えないといけないことは山ほどあった。そのあたりの話をする為に、みんなで会議室に集まった。


「今回のダンジョンは難易度をあげようと思ってるんだけど、みんなはどう考えてるかな」

俺がそう言うと、リンスがこう言って賛成する。

「上位冒険者に対してのダンジョン運営に耐えれる人材が揃っていると考えますので、賛成です」

それを聞いて、メタラギが意見を言ってきた。

「じゃが、それじゃとこの規模のダンジョンを運営するには、集客数に不安が出るのう」


「それは俺に少し考えがあるんだけど、せっかく上下で9階層もあるんだから、階層によって、難易度を大幅に変えていくってどうかな。一階層だったら低レベルの冒険者でも十分に冒険ができるレベルに設定して、奥に行けば、高レベルの冒険者でも苦戦するような難易度で、幅広いレベル帯に対応するんだ」


そう俺が発言すると、みんな驚いた顔をしている。

「それはすごいアイデアです、紋次郎。一つのダンジョンで幅広いレベル帯に対応するなんて・・どこからそんなアイデア出てきたんですか」

ファミュが感心したようにそう言ってくる。まあ、イメージはダンジョン探索系のRPGゲームなんだけど、そう説明するのが難しい。みんなに聞くと、意外に幅広いレベル帯に対応したダンジョンってのは無いようだ。奥に行けば強くなっていくダンジョンってのは当たり前にあるけど、それは初心者レベルから、上級者レベルに上がるほどの変化があるわけではなかった。やはり上級者ダンジョン。初級者ダンジョンのようなカテゴリーで分かれている。


俺の案が採用されて、階層ごとに、難易度を変えることになった。城の1階層は初心者レベルとして、ゴブリンやオークを配置する。上の2階層に行くと、中級者レベルにして、トロールやハウンドドックなどを配置した。上層3階層と4階層は上級、最上級冒険者のレベルとして、サイクロプスなどの強敵モンスターを配置する。上層最上階である、5階層は超級レベルとして、地龍などの高レベルモンスターなどを多く配置して、その難易度を高く設定した。


「地下階層はどうするんだ」

「地下はさらに難易度を上げる。地下1階層は上級レベルで、地下2階層は超級レベル。地下3階層は英雄級レベルに対応する。そして地下最下層である地下4階層は地獄級レベルとして、このダンジョン最高難易度にしようと思ってる。さらに各階層には何体かのボスモンスターを配置して、それを倒すと、階層レベルに見あった報酬がドロップするようにしようと思ってるんだ」


こうしてダンジョンの方針が決まり、モンスターを用意したり、報酬を用意したりとさらに忙しくなりそうであった。





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