新ダンジョン
第198話 久々の帰宅
ロザン遺跡の前で、キャンプをして一泊。火の前で炭豆茶を優雅に飲んでいると、上空に天馬艇が姿を見せた。その天馬艇から、人がパラパラと降ってくる。
「紋次郎!」
そう大声を発しながら、最初に落ちてきたのはミュラーナであった。久しぶりに見るその顔は、美しく引き締まった感じがする。ミュラーナは地上に着地すると、すぐに紋次郎を抱きかかえる。
「ちょ・・ミュラーナ」
「元気そうでよかったぞ紋次郎」
さらにデナトスとリュヴァも落ちてくる。リュヴァは遠慮せずに、俺の真上に落ちてきて、そのまま背中に抱きついてきた。
「紋次郎・・リュヴァ・・大人になった」
多分成長したと言いたいのであろう。
「ミュラーナ、抜け駆けで天馬艇から飛び降りるって何考えてるのよ」
ミュラーナはデナトスの言葉を無視する。無視されたデナトスは、なぜか俺の腕を引っ張って、引き寄せようとする。
それを見ていたアスターシアとリリスが抗議の声を上げ始めた。
「あなたたち、何ベタベタと紋次郎に触ってるのですの」
「お主ら、どさくさに紛れて何しとるのじゃ、紋次郎が困ってるではないか」
そう言っている二人も、なぜか俺にまとわりついている。
天馬艇が遺跡の前に降りると、ジラルダさんと、ヴィジュラが、興味深く見て回っている。カリスやアテナは、無言で荷物を積み込んで、さっさと帰り支度を始めた。
「みんな帰るから天馬艇に乗り込んでよ」
そう言うと、ぞろぞろと乗り込み始めた。そういえばヴィジュラはそのままついてくる気だろうか、普通に乗り込んでいる。
「ヴィジュラ、君はどうするだ」
そう聞くと、あっけらかんと、ついていくぞと言ってきた。
「いや、でも君はイディア族の族長なんだろ。大丈夫なの?」
「問題ない」
うむ・・何が問題ないかはわからないけど、イディア族が困らないのならいいけどね。エラスラの塔に引っ越す気なので、この時は、人数が増えたことによる部屋不足も心配していなかった。
天馬艇は本当に便利である。かなり距離のある工程を、半日ほどで移動すると、懐かしの我が家が見えてきた。
「くっ・・・やっぱり自分家はいいな、落ち着くよ」
俺がしみじみ言うと、ポーズがふてくされ顔でこう言ってくる。
「へいへい。それはようござんしたね。アホ主がウロウロしてる間、俺たちがどんな修行をやらされてたか・・・知らねえだろう」
「あっそうだ。どうだったの修行は」
「思い出したくもねえよ。地獄だ地獄! アズラヴィルは鬼だ鬼!」
「その甲斐があって、みんな強くなったじゃないか。信じられないくらいにレベルがアップしてると思うよ」
俺たちの会話を聞いていたアズラヴィルがそう横槍を入れる。
「そうやな、うちはすぐにでも修行の成果を試したいんやけど・・どこかに強い邪神でもおらんかな」
マゴイットは修行の手応えがあったようで、戦いたくてウズウズしているようだ
である。
「そういえば、出した求人の面接って明日でしょ、なんの準備もしてないけど大丈夫?」
デナトスの言葉に、そういえばそんな予定があったのを思い出した。
「うげ・・マジか・・明日1日くらい休みたかった・・」
「面接官ですが、私と紋次郎様、それとデナトス、ポーズ、アズラヴィルとミュラーナでいいですか」
そうリンスが提案してきたので、疲れた顔で返事する。
「そうだね。問題ないと思うよ・・あっそれにスフィルドにもお願いしようか」
「はい。わかりました、ではそのようにします」
スフィルドは目がいいから、俺たちに見えないこともよく見えそうなので、面接官にも適していそうだった。
その日は、みんな疲れてることもあり、軽く食事をとった後、すぐに就寝することにした。新しく入った歓迎会もやりたかったけど、ボロボロの状態でやってもつまらないからね。
次の日、事務所の前には、面接に来た人で混雑していた。レベル120以上と、厳しい条件だったけど、エラスラの塔を攻略したとの話が広まっている影響か、想像以上の人である。
「はーい。面接に来た方は、こちらに並んでください」
メイルとリュヴァが、面接の列を整理する。アルティとマゴイットが受付をして、ファミュが面接会場へ案内した。まあ、面接会場と言っても、事務所の共同部屋なんだけど・・
最初に面接に案内されてきた人を見て、俺たちは、今日の面接が大変なものになると、嫌な予感しかしなかった。なぜなら、その最初の人は、どう見てもゴブリンにしか見えなかったから。
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