第160話 友との別れ
空中城に到着した俺たちはすぐにみんなが石化している部屋へと向かった。部屋の入り口に到達した時に、ニャン太から声をかけられる。
紋次郎・・身代わりの聖玉を無事に手に入れたんだね・・
「そうだよニャン太、ほらちゃんと持ってきた」
俺は部屋の入り口から、ニャン太に身代わりの聖玉を見せた。それを見たニャン太は小さく頷く。
紋次郎・・君は誰と一緒に来たんだい・・すごい強い力を感じる・・
「そうだ、新しい仲間が一緒に来てくれたんだ。伝説級冒険者のファミュとマゴイットに大天使のアズラヴィル、それとアンドロイドのアテナだよ」
そうか・・この強烈な力はアズラヴィルのものだね・・それにしても君の周りには強い力が集まるね・・アズラヴィル・・君に少しお願いがあるんだけど・・その身代わりの聖玉を紋次郎から受け取って・・僕の元へ持ってきてくれないか・・君ならこの神威の呪いにも少しの時間なら耐えれるだろう・・・
それのメッセージを聞いたアズラヴィルはニャン太へ返事をする。
「ええと君は神獣フェルキーだね、わかった、その願いは聞き入れよう。それより、君は何をしようとしているんだ・・もしかしてこの石化の呪いから、その身代わりの聖玉を使って救おうとしているのかな・・」
俺がニャン太に代わってアズラヴィルに話す。
「そうなんだよ、ニャン太がその身代わりの聖玉を使ってみんなを助けてくれるんだ」
嬉しそうに話す、俺のその話を少し怪訝そうな顔をして聞くと、何かを伝えようとゆっくり話そうとする。
「紋次郎・・身代わりの聖玉の力とはな・・・」
アズラヴィル・・・話しは後にして・・すぐにそれを僕の元へ持ってきてくれ・・・
ニャン太は、アズラヴィルのその話を遮るようにそうメッセージを送ってきた。アズラヴィルは何かに気がついたのか、黙ってそのニャン太の指示に従う。
アズラヴィルは部屋にゆっくり歩いて入っていき、ニャン太の場所まで進んで行く。そして身代わりの聖玉をニャン太の目の前に置いた。ニャン太はその身代わりの聖玉を見えない力で持ち上げると、何か祈るようにそれに意志を伝える。するとニャン太は紋次郎に話しかけてきた。
紋次郎・・君との出会いは・・僕にとってすごく刺激的なものだったよ・・本当に楽しかった・・・短い間だったけどありがとう・・・みんなに心配ばかりかけるんじゃないよ・・・それじゃ・・お別れだ・・さようなら紋次郎・・・
紋次郎にはそのニャン太の言葉の意味が理解できなかった。なんでそんなお別れの言葉のようなことを言い出したのか・・
「ニャン太・・・何言って・・・」
紋次郎が入り口からニャン太にそう声をかけた時・・・友であるその神獣の姿は、物言わぬ石へと変わり果てていた。
それを見た紋次郎は何も考えずにすぐに部屋に飛び込んでいった。そして石になった友を抱きかかえる。
「ニャン太・・どうしたの・・どうして石になってるんだよ・・・身代わりの聖玉で何とかなるんじゃないの・・・返事してよニャン太・・」
そんな紋次郎の姿に心を痛めたアズラヴィルが、ニャン太の意志を話し始める。
「身代わりの聖玉が、呪いに打ち勝つような神器じゃないんだ・・身代わりの聖玉・・・使用した者は、あらゆる呪いの身代わりになれる・・そんなアイテムなんだ、そいつはこの空間にあるすべての石化の呪いを一人ですべて受けた・・魂も石化する強力な呪いの全てを・・もう、どうやってもこの石化は解けないんだ・・」
それを聞いた紋次郎は、両膝と頭を床につけて、ニャン太を抱きしめながら、大きな声を出して泣き出した。
石化が溶けて、その紋次郎の泣き声に気がついた仲間たちが、紋次郎の周りに集まってくる。状況のわからないファミュとマゴイットも自然とその仲間の輪に入っていく・・輪になって泣きじゃくる紋次郎を見つめるが、誰も声をかけようとしなかった。みんな悲しみにくれる我が主の涙が枯れるのを、ただただ待ち続けるのであった・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます