第161話 目指すべき道

「紋次郎はどうした?」

ポーズがリンスにそう問いかける。彼は彼なりに紋次郎の心配をしているようで、寂しそうな表情である。

「テントで休んでいるわ。今はそっとしておきましょう・・」

「そやな、あれにはかける言葉が見つからんわ」

「そうね、マゴイットと落ち込んでる人間では水と油、犬と猿、決して交わることないものね、絶対近寄らないでね」

「アルティ・・久しぶりの親友に対して、えらい言いようやないか」

マゴイットは少し睨むようにアルティにそう強く話す。それに対してアルティは涼しい顔でこう返した。

「そもそも今まで何やってたの、何百年も行方不明で・・私がどれだけ探したか・・」

「しゃあないやないか、グランジェのやつに氷漬けにされて、ダンジョンに放置されてたんやから」

懐かしい名前にアルティも反応する。

「グランジェ・・あの魔導騎士のグランジェなの」

「そうや、あいつ、うちを呼び出して罠にはめたんや、今度会うたらただではおかんで、あいつ今どこにおるか知っとるか?」

「グランジェは随分昔に魔境で行方不明になったはずだけど・・」

それを聞いたマゴイットは驚いた顔をした。それは殺しても死なないと思っていた古い友人に対する新しい知見であった。

「あれが魔境で行方不明になった・・・笑えん冗談や」


この時マゴイットは、グランジェが生きてこの世界にいることを確信していた。ああいう奴は見えないところで悪さするタイプや・・今はどんな悪事をしていることやら・・


紋次郎が中にいるテントをじっと見つめて、ファミュは彼が元気にそこから出てくる姿を想像して待っていた。そこへメイルが声をかける。メイルの横にはリュヴァも一緒であった。

「おねーちゃん、何してるの?」

ファミュはその少女に、不器用に自分の気持ちを隠して、オドオドと返事をした。

「あ・・紋次郎に用事があるんだけど・・・中々出て来ないから見ていただけよ」

「お兄ちゃん・・ニャン太のこと大好きだったから当分落ち込んでると思うよ」

「リュヴァ・・紋次郎・・心配・・ニャン太かわいそう・・でも今はそっとしておく・・」

子供に諭された見たいだけど、確かに今は紋次郎をそっとしておくべきだろう・・ファミュは無理に少し微笑むと、その場を後にした。


「なんだかんだ言っても石化だろ、なんとか治せないもんかね」

ミュラーナのその呟きに、アスターシアが否定的な返事をする。

「ただの石化じゃないからね・・神威の呪いで魂も石化してるんじゃ、さすがに治す方法はないかも・・」

「リリス、あんたにも心あたりないのか」

魔族であるリリスには、また違った知識があると思い、ミュラーナはそう聞いてみた。

「そうじゃの・・さすがに神威の呪いの石化を解く方法には心あたりはないの・・」


紋次郎はニャン太を抱きかかえて泣いていた。本当にどうすることもできないのだろうか、ニャン太を助けたい・・紋次郎はそう強く思っていた。


でも、あのアズラヴィルが、ニャン太の石化はどうやっても解けないって言っていた。大天使の知識がどれくらいのものかはわからないけど、それは限りなく不可能に近いという意味であろう・・・


だけど・・そんなの誰が決めた、石化が解けないなんて誰が決めた。誰も決めてない、ならば可能なことじゃないんだろうか、石化を解く方法が存在するんじゃないだろうか・・


「いや! 違う、たとえ石化を解く方法がなかったとしても、そんなの関係ない・・なかったら最初から作ってでも石化を解いてやる・・・」


それが紋次郎の答えであった。紋次郎は、涙を拭き取ると、ニャン太を抱きかかえ、テントから出てきた。そしてみんなにこう話しかけた。


「みんな心配かけたね、家に帰ろうか」


晴れた顔をした紋次郎の姿を見て、皆、心の底から安心する。そして家路につく準備を始めた。






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