第132話 高水準戦闘

12階層は砂漠が広がっていた。砂に埋め尽くされているだけではなく、強烈な日差しが照りつけていて、塔の中とは思えないほど砂漠にいる感覚であった。


パーティーがその砂漠に入った瞬間、それは襲いかかってきた。厚い皮膚に覆われ、体の周りには淡い光のオーラが立ち込めている。それは巨大なトカゲであった、バリアリザードと呼ばれる、強力な守備能力を持つモンスターで、推定レベルは230、間違いなく強敵である。


最初に動いたのはギュネムであった。武器の三又槍を振り回しながらバリアリザードの前へ躍り出る。闘気を投入した槍は赤いオーラに包まれる。その槍でバリアリザードの頭部をジャンプして斬りつけた。激しい稲光が発生して、ギュネムは弾き返される。


ダルネはギュネムに続いて行動に移っていた。手に持った黒い杖を振りかざして呪文を唱える。無数の光の槍が空中に出現して、それが一斉にバリアリザードに襲いかかる。しかし、その全てが、バリアリザードの体に到達する前に見えない障壁にぶつかって消滅する。


バリアリザードはその名の通り、体の周りに強力な万能のバリアを纏っている。英雄級の彼らの攻撃でも、その障壁を突破するのは容易なことではなかった。


ファミュは、何やらシュラザードに指示を出して、自分は中国武術の方のような動作を始めた。その動作は舞を舞うように美しく、見ているだけで飽きない。それはファミュのスキルである闘舞と呼ばれるもので、自主強化の能力であった。攻守だけではなく、敏捷性や反射速度も強化される強力なものであり、まさに万能強化と呼ばれる汎用性の高いスキルである。


ファミュの闘舞の間、パーティーの仲間たちはそれぞれの攻撃でバリアリザードの動きを封じていた。そんな中、ファミュの闘舞は完成する。


虹色に激しい輝きを放ち、もはやオーラの塊となったファミュは、高くジャンプしてバリアリザードに迫る。そのタイミングでシュラザードが何やら魔法を唱えた。シュラザードが唱えたのは強力な防御魔法であった。シュラザードの指示は、仲間を防御魔法で守ることであったのだが、それはバリアリザードからの攻撃の為ではなく、ファミュの攻撃とバリアリザードの障壁の衝突による爆発的な衝撃波を予測してことであった。


ファミュの後ろ回し蹴りと、バリアリザードの障壁が衝突する。ファミュが予測していたように、途轍もない爆発が起こる。まさに強力な爆弾が落ちたような衝撃波がフロアー全体に広がる。紋次郎を含め、パーティーメンバーは全員、シュラザードの防御魔法によって守られているので被害はなかった。


ファミュの蹴りの威力はバリアリザードの障壁の耐久力を上回った。障壁は、シャボン玉が破裂するように消滅する。


それを確認した仲間たちは、一斉にバリアリザードに攻撃を開始する。ダルネとボミノフとハーダーザ三人の攻撃魔法、ワインベルグの弓スキルが放たれ、その後に、ギュネム、バジュゴ、ラザックが接近戦で攻撃に入る。中距離からはクレナイが投擲武器を使用して前衛三人を援護していた。


先ほどまでバリアによって守られていたバリアリザードは、その身を守る障壁を失い。強力な英雄級冒険者の攻撃を受けてその体に傷を刻んでいく。怒り狂ったバリアリザードは、その口から青い炎を吐き出した。その炎からみんなを守るように、ラザックが巨大な盾を構えてそれを防ぐ。追い詰められたバリアリザードは大きな尻尾を叩きつけてきた。その尻尾をバリアリザードの凄そばまで接近していたゴン太ががっしり掴む。ここで紋次郎は、自分も役に立とうと剣を構えてバリアリザードに接近しようとすると・・


「紋次郎、あなたは近づいてはダメです。弱っていると言っても、あなたのレベルでは触れるだけで粉々にされますよ」


ファミュはそう言って俺に警告する。いや、確かにレベルは82ではあるけど、ステータスは246相当なので、大丈夫だと思うんだけど・・でも説明が面倒くさいので素直に従った。


やがて弱っていたバリアリザードは、ギュネムの三又槍の一撃を受けて動かなくなた。


強力なモンスターも危なげなく倒したパーティーの連携に感心する。同行させてもらって、最初の戦闘なので、ゴン太の戦闘参加が控えめであったが、次はもう少し活躍させてみたいと紋次郎は考えていた。



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