第133話 戦慄のゴーレム

バリアリザードを倒したパーティーは、すぐに上層へ行く階段へと向かった。さすがに砂漠なので視界が良く、迷うこともなく一直線でそこに到着する。12階層では、他に戦闘も起きず、次の13階層へと登っていく。


13階層も12階層と同じく、砂漠のフロアーであった。砂漠は歩くだけで、体力と水分を奪われる。塔を登るのに砂漠を歩くなんて想定していなかったので、俺はそれほど水を持ってきていなかった。砂漠の情報を知っていたファミュさんたちも、これほど塔の中の砂漠が、本格的なものだと考えていなかったようで、水を十分に用意していなかったようである。


「みんな、ちょっと辛いかもしれないけど、もうそんなに水がないから節約して飲んでください」


正直、強敵との戦闘よりこの状況は辛い。次のフロアーも砂漠だったらやばいんじゃないだろうかと考えていたのだけど・・悪い想像は的中するものである。14階層のフロアーも砂漠が広がっていた。


この状況に、ファミュとギュネムさんが話をし始めた。

「ファミュ、どうする、さすがに次の階層も砂漠だったら水が尽きるぞ、10階層の湖まで一度戻るって手もあるが・・」

「・・・情報では15階層は豊かな森林でしたよね、確かそこには湧き水があったはずですが・・・」

「その情報も怪しいもんだぞ。情報では14階層も森林フロアーの予定のはずだろう。だけど現実を見てみろ、この砂漠が広がってるんだぞ」


年月が経ち、前に冒険者が来た時と比べて大きな変化があるようである。ファミュたちが事前に仕入れた情報も少しあてにならないかもしれないと不安になってきていた。


ここでリーダーのファミュが決断する。

「15階層までは行ってみましょう。そこが砂漠化していたら撤退します」


紋次郎は少しホッとした。どんな状況でも自分は頂上へ行くまでは引き返す気が無かったので、また一人になってしまうのかと心配していたのである。


最初にその違和感に気がついたのは、忍者のクレナイであった。パーティーはもう少しで15階層への階段に到着するところまで来ていたのだが、そこで周りの気配に微妙な変化があることに気がついた。


「・・何かに囲まれているかもしれない・・」


気配を察知する能力に関して、卓越した能力を有する彼女のこの言葉に、パーティーに緊張が走る。彼女が何かいると言えば、間違いなく何かが存在するということであった。


すぐに全員が戦闘態勢に入る。緊張の中、全員が警戒して様子を見ている。暫くすると、目で見える形でそれは現れた。それは5mくらいの大きさで、バッファローを二足歩行にしたような形をしていた。目は赤く、表情を見ると強烈な敵意を向けてきていた。この姿を見て、紋次郎以外の全員の顔色が変わる。


「やばい・・ヘルデーモンの群れだ・・」


一匹で、英雄級冒険者のパーティーを全滅させる戦闘力を有する強敵モンスターが、群れで現れた。さすがの精鋭パーティーでも危機的状況のようだ。


ファミュは闘舞を始めた。他のメンバーもそれぞれ戦闘を開始する。ギュネムは目の前に迫ったヘルデーモンに向かっていき、三又槍を振り回して攻撃を繰り出す。攻撃はヒットしているが、致命傷には至らないようである。バジュゴはギュネムの向かった逆の敵を牽制する。両手剣で攻撃しながら、周りのヘルデーモンが後衛の仲間に近寄らないように気をつかっていた。


後方から、ダルネたちはパーティーに接近するヘルデーモンに、攻撃を浴びせる。接近されて乱戦になれば、かなり危険な状況になるのは明らかであった。クレナイは前衛の援護と、後衛のサポートと忙しく動き回っている。


みんなかなり善戦してはいるが、敵の数が多すぎる。徐々に後衛のすぐ側まで接近され始める。このままでは陣形が崩されてかなりマズイ状況になりそうであった。


さすがの紋次郎も、この状況が良くないことを感じていた。紋次郎はゴン太に、敵の殲滅を指示する。ゴォォオと雄叫びをあげて、ゴン太はヘルデーモンの群れの中へ突入する。


すごい速さで自分たちの中へ進入してきたその敵に対して、ヘルデーモンたちは一斉に攻撃魔法を繰り出した。数十匹のヘルデーモンの攻撃が、ゴン太に直撃する。しかし、その攻撃はゴン太には全く効いてないようであった。ゴン太は一番近いヘルデーモンから、その拳で攻撃を開始する。


ゴン太のパンチは、一撃でヘルデーモンの頭部を破壊する。ゴン太はすぐにその隣にいたヘルデーモンの腕を掴んで地面に叩きつける。そして足で踏みつけて息の根を止めた。


ヘルデーモンたちは、ゴン太に攻撃魔法が効かないと感じたのか、その爪とツノで攻撃を仕掛けてきた。だけど、硬い岩でできているゴン太にはそれも通用しない。すぐに反撃を受けて、頭部を粉砕される。


ファミュはゴン太の活躍を感心して見ていた。まさに巨神とも呼べるその力に、頼もしさを感じていた。だけど、それと同時に伝説級冒険者としてのプライドをくすぐられ、自らもヘルデーモンの群れへと突入していく。


その後のゴン太とファミュの活躍は凄まじいものであった。まさに秒で一体のヘルデーモンを血祭りにあげていき、見る見るうちにその数を減らしていく。


数百のヘルデーモンの群れも、ゴン太とファミュの活躍で全滅させることができた。ファミュが活躍するのは予想通りなので驚きはしなかったが、ゴン太の強さは、全員の予想を遥かに上回っていた。ゴン太の評価は俺の評価のようで、それからみんな、仲間として接してくれるようになった。




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