第117話 迷宮主の奮闘

紋次郎は、レベル61にアップしていた。ステータスはレベル183相当にもなる。この高ステータスに、神の寵愛による様々な恩恵が紋次郎に付与されていた。これでまともに天空の騎士と戦える・・と、そんなに甘くはなかった。天空の騎士の推定レベルは270、今の状態でも紋次郎との力の差は大きかった。


しかし、もうニャン太のできることは全てやりきり、後は紋次郎に頑張ってもらうしかなかった。


天空の騎士は怒涛の連続剣撃を繰り出す。瞬時に先読みスキルを発動して、紋次郎はそれを的確に避ける。今の状態であれば、ターボを使用しなくても攻撃を避けれるくらいにステータスは上昇していた。敵の隙を見て、紋次郎は閃光丸改を振り抜く、天空の騎士の攻撃がヒットするが、全くダメージを与えているように見えなかった。


どうしよう・・これじゃあどんなに攻撃しても倒すことなんて出来そうにない・・紋次郎のその考えは間違いではなかった。そもそも閃光丸改の攻撃は光属性である。光属性の耐性が高い天空の騎士には、そもそも閃光丸改は有効な武器ではないのであった。しかし、他に攻撃手段のない紋次郎には有効ではないその武器を使用するしか選択がなかったのである。


天空の騎士は懲りずに剣での連続攻撃を繰り出してくる。紋次郎は少し気持ちに余裕を持ってその攻撃を避けていく。今の紋次郎には、この程度の攻撃は簡単に避けることができた。先読みで、次の攻撃の軌道がわかるのが大きく、それがなければ、紋次郎の戦闘技術ではとても避けれる攻撃ではなかったであろう。


体力の続く限り、攻撃を避け続けると思っていたのだが、それは甘い考えであった。不意に剣撃を避け損ねる。紋次郎の肩から赤い血が噴き出した。それを皮切りに次々に攻撃が紋次郎の体を切り裂き始めた。腕、首、足など切りつけられ血が噴き出す。


間違いなく天空の騎士の攻撃スピートが上がっていた。慌てて紋次郎はターボを発動する。


どうして・・さっきまでここまで攻撃のスピードは速くなかったのに・・


そんな疑問を、ニャン太が答えてくれた。

紋次郎・・強化スキルを持っているのは君だけじゃないよ・・天空の騎士は加速系のスキルを使用したみたいだ・・気をつけて紋次郎・・天空の騎士はまだまだ本領を発揮していない・・


今でもギリギリの戦いなのに、まだ本領を発揮してないなんて・・どうやって勝ったらいいんだ・・しかも相手には俺の攻撃は通用しないし・・


ターボを使用すれば、さすがにスピードでは圧倒していた。しかし、天空の騎士にダメージを与えられないこの状況では、いつか体力が尽きてしまい、殺られてしまうだろう。なんとか敵に攻撃できる手段を見つけないと・・


敵の攻撃を避けながら、俺は周りを見渡した。何か利用できるものがないか探す。そんなよそ見をする俺の行動を見逃すほど敵は甘くはなかった。剣撃をフェイントに俺の体勢を崩して、巨体を生かした体当たりを繰り出してくる。先読みでの反応が遅れて、それをまともに受けてしまった。俺は短い叫び声の後に、血を吐き出し、数十メートル吹き飛ばされる。


地面に何回も叩きつけられ、バウンドしながら飛ばされる。俺は頭を何度も打ち付け、意識を失いそうになる。


朦朧とする意識の中、すぐに敵を見る。天空の騎士は加速して、すぐ目の前に迫っていた。助走をつけた先ほどとは比べようにならないような強烈な体当たりが紋次郎を襲う。


死んだ・・受けた瞬間そう思ったほどの痛烈な一撃は、紋次郎を大砲の弾のように吹き飛ばして、すぐ後ろの壁を突き破る。紋次郎の意識は、切れた糸のようにプツリと途切れた・・・


完全に気を失った紋次郎は夢を見た・・それはこの世界に召喚されたばかりの時のものであった。紋次郎は前の迷宮主に宝物庫を見せてもらっていた。そこは宝の山で、金銀財宝が輝いていた。信じられないような強力そうな武具も大量に置いていて、その中でも特に凄そうな剣を紋次郎は手に持った。現実の記憶と夢が交差して、紋次郎はふと思う。この剣が今あればな・・・天空の騎士なんてぶった斬るのに・・


紋次郎・・・・紋次郎・・・起きろ紋次郎・・・


ニャン太のその声を聞いて、紋次郎の意識が急激に覚醒する。見るとすぐ目の前に天空の騎士が迫っていた。紋次郎は手に持ったで天空の騎士を切りつけた。凄まじい衝撃と斬撃が天空の騎士を吹き飛ばす。


天空の騎士が地面を転がっていく姿を見て、紋次郎は我に帰る。彼の手にはいつの間にか一振りの剣が握られていた。先ほど壁を突き破って飛ばされた部屋の中を見渡すと、金銀財宝が大量に置かれていて、どうやらここは宝物庫のようである。紋次郎は、まだ発見されていなかった空中城の宝物庫を偶然見つけたのであった。そしてそこにあった剣を無意識のうちに手に取っていた。







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