第47話 新装備

今回行く天然ダンジョンは、この間の自然保護ダンジョンと比べ、難易度的には比較にならないほど高い。その為、準備も万全の体制をとらなくてはいけなかった。経験者のリンスの話だと、アダータイの天然ダンジョンの10階層に行くのに4〜5日はかかるそうだ。アダータイの天然ダンジョンに行くのに5日、ダンジョン内で5日、最低でも往復で20日の行程と長旅になりそうであった。


「水と食料はどれくらい用意しますか?」

「ダンジョン内で使用する分の食料は、エラスラの街で購入すればいいから、まあ道中分でいいと思うわ」


エラスラはクラッス地方の大都市で、アダータイの天然ダンジョンのすぐ近くにあった。ダンジョン内で必要な物資はそこで購入することにして、持って行く荷物は、道中の食料、装備品や道具などに絞ることにした。


「それより、紋次郎・・その方はどうしてそんなにあなたに密着しているのかしら」

もちろんアスターシアの指摘するのは先日俺が悪魔召喚したリリスのことである。リリスはなぜか、俺の後ろに立って腕を俺の首にまわしている。

「私は紋次郎の部下じゃ、近くにいて何が悪いのじゃ?」

「近すぎなのですよ・・この色欲悪魔!」

「妖精ごときがこのリリスにそのようなものの言いよう・・・面白いの〜」

フラッと立ち上がったリリスは何やら殺気を放つ。こんなところで二人が暴れたら事務所が壊れる。

「二人とも喧嘩しちゃダメだよ。リリス、みんなとは仲良くやって欲しいんだ。君も含めて大事な家族だからね」

「・・・了解じゃ、努力しよう」


その光景を見て、リンスは改めて驚愕していた。あのリリスが人間に従うのを見る日がこようとは・・


「それより紋次郎、お前にプレゼントじゃ」

「え、プレゼント?」

それは閃光丸に似た短剣だった。でも少し閃光丸より長いかな。

「これは閃光丸改じゃ、今の閃光丸じゃ、アダータイの天然ダンジョンでは通用せんじゃろうからのう、ワシとデナトス・・そしてニャン太で作成した新武器じゃ」

「ニャン太も手伝ってくれたの?」

そう聞くとニャン太は眠そうな顔で小さく頷いた。

「そうか〜ありがとう、強そうだね」

「強いぞ、ニャン太が神力のエンチャントを付与してるからのう、そんじょそこらの魔法剣よりはるかに強いぞ」


デナトスは鳴神を持ってきて、俺の前に置いた。そして話をしてくる。

「紋次郎、それと鳴神もパワーアップしてるから。こっちもニャン太の神力エンチャント付きだよ。おそらく数倍能力が上がってるわ」


「すごい・・俺はどれくらい強くなっなったんだろうか」

「いや・・勘違いしてはダメじゃぞ、紋次郎が強くなったんじゃなく、装備が強くなったんじゃからのう」

リンスも心配顔で、俺に忠告してくる。

「紋次郎様、いいですか、今度行くアダータイの天然ダンジョンは、前に行ったマミュラ洞窟とは次元が違います。以前みたいにはぐれたら本当に危ないので気をつけてくださいね。いくら装備が強くなったって言っても、レベル100越えのモンスターばかり生息する危険な場所ですから・・・」


確かにそんな化け物相手では、装備が強くなったって言っても俺の手に負えるもんじゃなさそうだ。本当にみんなにはぐれないようにしないと・・


準備が整い、アダータイの天然ダンジョンへ出発することになった。メンバーはリリスが加わったことで一人増えて8人パーティーである。ダンジョン配置の為にリリスを召喚したのだけど、彼女ではあまりにもレベルが高いので、こちらに同行してもらうことになった。でもその代わりに、リリスが自分の眷属を呼び出し、ダンジョンに放ってくれたので助かる。しかもこの眷属たちは無料なのだ・・これから先、度々お願いすることになりそうである。


「それじゃ〜行ってくるね」

「気をつけるんじゃぞ」

「お兄ちゃん無理しちゃダメだよ」

「グワドン・・・ボスしないといけないから一緒に行けない・・紋次郎・・・怪我・・しないよう・・・に」

「けっ・・土産忘れるんじゃねーぞ」


留守番組に見送られ、俺たちはまずはクラッス地方のエラスラの街へと向かった。アルマームの街の北を通っている北天街道を西に進む。大きな街道沿いはモンスターもあまり出現しないので、何事もなく、北天街道西端のネモリ村へと到着した。ここまでくればエラスラの街は目と鼻の先らしいのだが・・この村でちょっとしたトラブルに巻き込まれてしまった・・


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