第37話 インポッシブルクエスト
アルマームの街のメイン通り、迷宮横丁から路地に入ると、酒場がいくつも並ぶ通りがある。通称、飲兵衛通り。主な客層は冒険から帰還した冒険者たちである、ここの酒場を手分けして周り、紋次郎たちは新しいダンジョンの宣伝を乗せたポスターを貼らしてもらっていた。そのポスターには、攻略報酬としてブフの結晶石があることが記載されている。
とある酒場でポスターを貼るのをお願いしていると、リンスが、クエストの張り紙を見ていて、驚きの声を上げる。
「紋次郎様、これ見てください」
「え? いや・・俺、字が読めないし・・・」
「あっそうでしたね。このクエストの報酬・・マルマオの宝玉なんですよ・・」
「へ〜そうなんだ〜・・・え! それって絶対解呪の・・・」
「そうです・・」
「ちょっ・・・どんな依頼なんだ?」
「え・・とですね。ミドラクドにある、塔の謎の解明ですね」
「難しそう?」
「推奨レベルは50なので難しくはなさそうです」
「じゃークエストを受けよう!」
「そう言うと思いました。ではマスターに話をしましょう」
酒場のマスターはクエストの受付などもおこなっていた。クエストの受注は、お願いした冒険者が失敗するまで、次の人へは依頼できない決まりになっている。その為にあまりにも推奨レベルより低いと、受注を断られてしまうのであるが・・・なのでレベル30ほどの俺では、当然のごとく受付てくれなかったのだけど・・
「レベル125・・・・は・・はいもちろん、それならぜひお願いしたいです」
さすがは高レベルのリンスである。二つ返事で受注できた。
「ではこちらがクエストの詳細になります。期限は一週間、それまでにお願いします」
ポスターを貼り終わった俺たちは、みんなと待ち合わせしている、ミュラ魔導商店街にある、フクロウの酒場へと足を運んだ。店に入るとすでにポーズとデナトスが何やら飲み物を飲んで待っている。
「おう〜主! 先に飲んでるぜ」
ポーズの挨拶など無視して、俺とリンスは少し笑顔でデナトスに近づく。
「どうしたの二人とも、いいことあった?」
「聞いてくれデナトス、マルマオの宝玉が報酬のクエストを見つけたんだ」
「そうなの?」
「そう、これがクエストの詳細よ」
デナトスはそれに目を通して、目を細める。
「まずいわね・・これはインポッシブルクエストかもしれないわ」
「インポッシブルクエスト?」
「攻略不可能のクエストです・・まさか・・でも確かに不可解な点もありますが・・」
「ここ3ヶ月の間だけでも7パーティーが挑戦している・・中にはレベル100近いパーティーもいるのに全て挑戦を断念しているし・・・しかも皆、失敗ではなくクエストを破棄している。クエストを調査しているうちに攻略不可能と判断しているんじゃないかしら」
「不可能って・・そんなクエストあるの?」
「この世界にもう存在しないアイテムの回収とか、絶滅種の討伐とか、ごく稀にそんなクエストが出回ることがあります」
「で、何するクエストなんだよ?」
内容が気になったのかポーズが話に入ってくる。
「ミドラクドにある、塔の謎の解明です」
「なんでぇ〜そんな内容でインポッシブルな訳ねーじゃん。単純に謎が難しいだけだろう」
確かにポーズの意見ももっともである。
「で、謎ってのは何なのか内容はわかんねーのか?」
「依頼主から直接話を聞くとしか書かれてないのよ」
「じゃーいって聞いてくるしかねーだろう。依頼主はどこにいるんだよ」
「ミドラクドの北部、塔のすぐ近くよ」
「なら馬車で半日ってとこか、すぐにでも行った方がいいかもな」
そんな感じで話をしていると、散歩に出ていたアスターシア、そしてメイルとアルティ、ソォードとメタラギが合流してきた。各々ドリンクを注文して、話に加わる。
「じゃー話をまとめるぞ、まず、誰がこのクエストに行くかだ」
「まずはクエストを受注したリンスでしょう。それに謎の解明ってクエストの内容から、ムカつくけど一番それに適しているポーズと・・」
「謎解きなんぞワシには無理じゃから今回は留守番するぞ」
「そういえば宣伝してるから、リンスの仇がダンジョンに来る可能性があるんだよな、そっちも重要なんで、今回は留守番のメンバーもよく考えた方がいいよね」
「確かにね・・とにかく前に話した通り、この期間だけ、ダンジョンの難易度を上げて、来た冒険者を全て全滅させるつもりだけど、不測の事態に備えて、最悪モンスターとしてダンジョンで戦えるアスターシアとニャン太は、ダンジョンに残ってもらおうと思ってるわ」
実はリンスの仇の対応の話は、事前に済ませていた。それは一時的なダンジョン攻略レベルの引き上げ・・現在のうちのダンジョンレベルは65、しかしこれではブフの結晶石狙いの上級冒険者に簡単に取られてしまう。それでは本来の目的である、リンスの仇の誘い出しができない。なのでリンスの仇が来るまで、ダンジョンレベルを120くらいまでに引き上げるのである。その為、グワドンを魔法装備で武装化して戦力アップ、アルティにレベル90のドラゴンゾンビを三体生み出してもらい配置、そしてデナトスの最高傑作、アイアンゴーレムの強化種である、鉄魔神を配置した。
これで、そんじょそこらの上級冒険者でも攻略困難なダンジョンへと生まれ変わる。ちょっとその後の評判が悪くなるのは覚悟の上で、今回はこれしか方法がないと考えている。
「ニャン太とアスターシアってモンスターとして配置できるの?」
「基本、ダンジョン法で、冒険者はダンジョン運営側での防衛戦闘はできません。しかし・・この冒険者の定義が曖昧なんですよね。普通は冒険者の加護を受けている者を冒険者と認識されているんですが、例外がいくつもあるんですよ、例えばアスターシアは冒険者の加護は受けてないですよね?」
「そうよ。私は
「もちろん、神獣であるニャン太も冒険者の加護を受けていないんです。しかし、冒険者の資格は持っているんですよ」
「冒険者の資格?」
「はい。蘇生資格とも言われているものですが、生き返らせることができるかどうかです。これがあれば冒険者として認められるんです」
「あっ前に聞いたけど、冒険者の加護が無いと蘇生できないって話か・・」
「そうです。正確には冒険者の加護以外でも、同じ効果のある加護や能力は存在するんです。なのでそのどれかの力があれば問題ないんですよ」
「ちょっと待って・・じゃ〜アスターシアとニャン太って冒険者としても、モンスターとしても認められているってこと?」
「はい。その通りです。まー多少グレーではありますけどね」
「すごいなアスターシア、すごく助かるよ〜」
それを聞いたアスターシアは頬を赤く染めて、モジモジと紋次郎の首元にすり寄ってくる。
「さて、話を戻すぞ。クエストに行くメンバーと残るメンバーだけど・・」
「私は残った方がいいと思います」
アルティはそう発言する。
「どうしてだいアルティ」
「だってリンスの仇の情報を得るのが目的でしょう? 私にはネクロマンシーの魔法で、死者から無限に情報を引き出すことができるからです」
「そっか、冒険者は全滅させるから、みんな死体になるもんね〜」
「確かにその方が良さそうじゃのう」
「じゃーアルティは留守番だな〜、あと決まってないのはソォードとメイル・・それと紋次郎とデナトスか、あっメイルは蘇生があるから留守番組だな」
「まー留守番はワシとアルティ、それとアスターシアとニャン太、メイルとグワドンと十分じゃろう。クエストの方は本当の難易度もわからんから、残りのメンバーは皆そっちに行っても問題なかろう」
「よし。まとめるぞ〜留守番はメタラギ、アルティ、メイル、アスターシア、ニャン太、グワドン。クエストが
「それじゃー一度戻って用意したら、クエスト組は今日にも出発しよう」
こうして、俺の2度目の冒険が決まった、それはもしかしたら
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