想い出図書館

傘ユキ

プロローグ

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 ―こんにちは。ここがどこか、ですか?


 ここは想い出図書館です。


 いえ…貴方のように、知らない方が殆どでしょう。想い出図書館は貴方たちの住む「こちら」側ではなく、「あちら」側にあるのですから。

 想い出図書館は、人々の記憶を本の形を取って保管している図書館です。それこそ世界中の人々の記憶が、この図書館に保管されているのです。


 誰しも生きていれば、記憶の全てを頭の中に留めておくことは出来ません。たとえ大事な記憶であっても忘れてしまうこともあるでしょう。そのためにあるのがこの図書館です。

「記憶の本」はその人そのものであり個人の所有物です。ですからその人が亡くなられる間際には本に収まっていた記憶はすべて本人に還されます。所謂いわゆる…走馬灯、ですね。

 普通は亡くなるまで「記憶の本」の存在を知ることはありません。でも、時々いらっしゃるのです。大事な記憶を想い出すために、無意識にふらりとこの図書館に現れる方が。

 貴方もそのふらりと立ち寄った方の一人でしょう。

 大切な記憶をなくしておりますね。

 私も司書として、微力ながら貴方の記憶を取り戻すお手伝いをしますから、ご安心ください。


 さぁ、貴方の「記憶の本」を探しましょうか。


 ……。

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