第75話 文化祭Ⅶ

「春樹、本当かい? 本真先生に小説を許可してもらう方法を思いついたって言うのは」

「いや、そこまでは言ってない。……ただ、どうして本真先生が文化祭で小説を出すことを認めてくれないのか、その理由について、もしかしたらと思う考えが浮かんだってだけだ」

 密着してくる晴人の体を手で押しのける。こいつ、やけにやる気なんだよな。文化祭で小説を書こうって話になったときから。正直暑苦しく感じるくらいだ。

 それはそうと、時間がない。下校時刻まで残すところ一時間だ。早く行動に移さないと、間に合わない。文化祭実行委員に参加用紙を提出する時間も必要だし。

「ここで立ち止まって話している暇はない。さっさと本真先生のところへ行くぞ」

 そのまま本真先生がいるであろう職員室へと足を速める。

 保健室と同じく職員室は教室棟の一階に位置するが、保健室が一方の端に位置するのに対して、保健室はその反対側の端に位置するので、廊下を少しばかり歩く必要がある。

 早く早く。そういって焦る俺の心に比例するようにして、刻一刻と時間が過ぎていくように感じられる。

 そのままあっという間もなく職員室の前に到着し、職員室の扉をノックなしでスライドさせた。

 職員室を見渡すも、なかなか本真先生を見つけることができない。

――どこだ、どこにいる。

「いた! 本真先生!」

 秋月の指さす方を見れば、本真先生がこちらに目を向けていた。

 俺は先生のところまで足を進める。

 先ほどまでとは打って変わって、今度は自分の足取りがひどくゆっくりとしたものに感じられる。一歩一歩、職員室のタイル張りの床を踏みしめるその感触が、まるでスロー再生されているかというように、はっきりとくっきりと身に染みてくる。

 どれほど時間が経っただろうか、長きにわたる旅を終えたような気持ちで、俺は先生の前で立ち止まった。

「本真先生、保健室の件と小説の件でお話があります」

 そうですか、本真先生のつぶやきはとても小さな声であったため、正確な言葉は分からないが、恐らくそう言ったのだと思う。

 タイル張りの冷たい床から顔を上げ、今度は俺たちに向かって、俺たちに届けるために口を開いた。

「少し場所を変えましょうか」

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