第41話 校外学習XIII
――――着いた――――。
ようやく、到着。
麓から頂上に着くまで約一時間半――しんどかった。登山道には、《クマ出没 注意》と書かれた看板があったり、実際に蛇がいたりして、かなり心臓に悪かった。何度、俺はここで死んでしまうのではないだろうかと感じたことか――。クラス単位で登るため、話しかけてくる奴は、秋月と風間隼人――学年のアイドル的存在――の二名ぐらいだった。秋月は登山開始の数分後に女子のクラスメンバーから声を掛けられていたため、序盤少しだけ話をした。風間は、中腹あたりで後ろから追い越されるときに《古川じゃないか。頑張ろうな》と言って、颯爽と山を登っていった。
そんな感じで、概ね会話をすることなく、ひたすら足を前へ前へと一歩一歩動かし続けた――学校行事でもなければ、俺が自分から山に登ろうなどとは決して考えないだろうなと、何度感じたことか。
そんな苦行に耐え、ようやく山頂に到着したわけだ。
この後は睡眠時間――疲れ切った体を休めるのにはもってこいだ。願わくば、風呂に入りたかったが、それは欲が過ぎるだろう。そもそも山頂に風呂の施設があるなど――。
「各自、風呂に入ったのち、十分な休息をとるように――以上!」
……な、に? 風呂が、ある、だと。
他のクラスメンバーは、担任が発したその言葉に舞い上がっていた。中にはダッシュで風呂場へと向かう者もいた。
俺はできるだけ平然を装いながら――俺のことを見ている奴などはいないことは分かっているが――できる限りゆっくりとした動作を心がけながら、風呂へと向かう集団の最後尾の後へついていった。
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