第38話 校外学習Ⅹ

 俺たちが次に目を付けたのは、サイエンスショーだ。子供向けの開催が主だが、実は大人向けイベントも行われている。そのイベントの中で、観客の二人に実験の協力を申し出る場面があり、それに田辺と田口さんに出てもらう作戦だ。

 そんな都合よく二人を指名するなんてことが起きるのかと疑問を呈したが、どうやら大阪市立科学館と緑坂高校の天文部はつながりがあるらしく、さらに晴人は天文部に頼りになる先輩がいると言って、そこは何とか田辺と田口さんを指名してもらうように交渉してみるとのことだった。

 そして、もう一つクリアしなければならないのが、田口さんがサイエンスショーにそもそも来てくれるのかという点だ。田辺には事前に伝えてあるので来るに違いないが、田口さんが来てくれるのか。秋月が田口さんの友達と仲が良いらしく、事前にサイエンスショーの面白さをアピールしたそうだが……。人事を尽くして天命を待つ状態だ。

 現在、サイエンスショー開始十分前――会場に田辺は来ているが、田口さんの姿は見当たらない。周りを見渡して落ち着きのない田辺のところへと歩み寄る。

「落ち着いて座ってろ。田口さんが来たら合図してやるから。……そんな怪しい動きをしてたら警察に捕まるぞ」

 最後のジョークにくすりと笑う田辺。

「ありがとう。少し楽になった」

 その言葉を聞き届け、俺は秋月のいるところへと戻った。

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