第12話 入部試験Ⅲ

「探すって、何か手掛かりでも見つかったのかい」

 後ろに晴人、続いて秋月もついてくる。

「ああ、まあな。おそらく桜井先輩を見つけられると思う」

 階段付近でオーボエの練習をしている女子生徒に話しかける。

「すみません、先ほど桜井先輩を見かけませんでしたか」

 涼やかな印象を抱かせる青みがかった黒髪ショートの女子生徒は少し考え込むようにした後、口を開いた。

「あっち、二階」

 それだけ言うと、彼女はまたオーボエの練習に戻っていった。

 彼女が教えてくれた特別棟二階に向かう俺たち。

 階段を上りながら、晴人が尋ねてくる。

「何をしようっていうんだい」

「見てればわかる」

 上りきると、そこにはフルートを吹く女子生徒の姿があった。

 俺たちの視線に気づいたのか、その女子生徒は演奏を中断してこちらに顔を向ける。

「どうかしたの?」

 長い黒髪を一つに束ねたポニーテールと不揃いに伸びた前髪をしており、少し勝気そうな顔立ちが印象的で、先ほどあった吹奏楽部員とは対照的な雰囲気を醸し出しているように感じられる。

「練習中にすみません。桜井先輩を見かけませんでしたか」

「ああ、桜井先輩だったら、さっき渡り廊下の方へ走っていったよ」

 彼女は渡り廊下の方を指さす。

「そうですか、ありがとうございます」

 礼をして渡り廊下へと足を進める。

「もしかして、吹奏楽部員たちに順番に聞いていくつもりなのかい」

 晴人が確認という調子で話しかけてくる。

「ああ、そういうことだ」

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