第6話 入学Ⅵ

 一年生の教室が普通棟の三階にあり、特別棟とは渡り廊下でつながっているため、特別棟の三階にたどり着くまでの時間はあっという間だった。しかし、その後が問題だった。

「何部かわからないと、どの部屋が部室かもわからないんじゃないか、これじゃ」

 天文部、囲碁部、料理研究部など、色々な部名が書かれたネームプレートがそれぞれの教室に掛けられている。この三階だけでも、その数は十を超えているのではないだろうか。

「……どうしようか」

 いや、俺に聞かれてもな。

「先輩から何か聞いていないのか。どの部屋に来いとか」

 腕を組んで答えが返ってくる。

「部屋については何も。地学準備室が部室だとは聞いているけど。……まさか部屋のネームプレートに部活名が書かれているだなんて、予想外だよ」

 俺たちがこれからの行動を検討しているところに一人の女子生徒が通り過ぎていく。

「あ、すみません」

 彼女に聞いてみるか。

「地学準備室がどの部屋か教えてもらえませんか」

 彼女は申しなさげな微笑を浮かべた。

「すみません。私、新入生で――」

 確かに俺たちと同じ一年生のカラーである青の校章を胸につけている。ちなみに二年生は赤色、三年生は黄色である。軽くお辞儀をしてから彼女は廊下の奥の方へと歩を進めていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る