第2話 セバス×ツアレ【÷ソリュシャン】=揺り籠を揺らす者?
十月十日、人間としては十分な妊娠期間。
だが、竜人たるセバス。竜人としての血が、遺伝的形質が、その血を半分引く事になる子供には、それだけでは時間が足らなかった。
結果として、竜人としては超未熟児で生まれた。
竜人としての血も、母体となるツアレの体に無理を強いた事もあった。結果として、赤ん坊は様々な形で形成不十分に産まれ落ちる事となる。
そこへ、ソリュシャン・イプシロンによる提案。
自身の一部をツアレの体内に侵入させ、胎児を自身で包み込み、その内に取り込み、無事に取り上げる事。
取り上げた後、体内部でNICU《=新生児特定集中治療室》として、一定期間生育し、人間としての母体では不足しがちな要素を補給させつつ、形成させた。
代理母として、養母として認識される。
いつもは、徐々に溶けゆく様を観察して楽しんでいたが、逆に養育は徐々に形作られて行く様を観察するという、ソリュシャンからすると奇異な体験から、極限定的ではあるが、愛着が湧いたらしい。
それから暫し後・・・
・・・ ・・・ ・・・
揺り籠を揺らす者
「・・・厳格なる罰をお願いします」
周囲が重く静まる中、視線が二つの点に集まった。
一つは、玉座に座す至高の存在たるアインズに。
もう一つは、こういった失態にはトンと縁が無いだろう筈のデミウルゴスの元に。
「フム。では、デミウルゴスには・・・」
その後に続く一言は、周囲を凍り付かせるのに十分だった。
コキュートスとしては、そんな事が罰になるのだろうかと不思議そうに考えている。
シャルティア、アウラ、マーレ達はキョトンとしながら果たしてそれで良いのだろうかと思っている。
言われたデミウルゴスはこれでもかというほど、心の中で脂汗を流している。
「そ、それは・・・」
戸惑うデミウルゴスを後目に、アインズはもう事は済んだと決定した。
デミウルゴスであれば、さほど問題でも無かろうと。
「セバス、あの子は?」
「はっ! い、今は、その・・・眠りについている様です」
執事に有るまじき事に、返事が遅れてしまったセバス。
「フム、そうか。では、ソリュシャン」
「はい」
「デミウルゴスに必要と思われる情報を後で伝えておくように」
「はい、かしこまりました」
・・・ ・・・ ・・・
開いているか開いていないか分からない細い目で、執務室に持ち込まれた揺り籠を前に、赤ん坊をあやそうと試みるデミウルゴス。
「・・・べろべろばぁー」
特に感情も感慨も籠らない声が、執務室に響く。
他の者達がこの様にあやしているのを見て居た事もあり、それを真似してみたのだが、
「・・・うあっうあうぅ~!」
芳しい反応は無い。表情に全くと言って良いほどに変化が無い為、不機嫌そうにぐずりそうになっている。
これは不味いと、慌てて【眠りたまえ】と支配の呪言を用いるデミウルゴスだが、
「うぅぅううううあぅっ!」
言われている意味が分からないものだから、不機嫌さが増している。
如何したものかとオロオロしているデミウルゴス。
「デミウルゴス様、それは流石に・・・」
副官としてデミウルゴスを補佐する女悪魔が何気なく抱き上げ、ゆっくりと揺すると、一寸ご機嫌になった。
「べろべろばぁー!」
表情豊かに眉を
「居ない居ない」と翼で顔を覆い隠し「バァー!」と目を大きく見開き、口を大きく大きく開けた顔を見せる女悪魔。
青く血走った目は今にも零れんばかりに見開かれ、大きく大きく開かれた口は丸呑みに出来るほど、中は鮫の様な乱杭歯が並び、口の中からはヤツメウナギの様な舌が「シャ
「・・・キャッキャッ!」
目の前のモノが何なのか確かめ様と、幼子は懸命に手を伸ばすのだが、届きそうで届かない、悪魔的な絶妙な距離を保って揺れる舌。
「な、何故・・・」
部下に負けた事に打ちひしがれるデミウルゴス。
/// /// ///
実はエントマの影響・・・
時折、赤ん坊の顔を見に来て、徐に顔を近付けながら「居ナイィ居ナイィ」と言いながら、着物風なメイド服の裾で顔を隠し「バァー!」と本来の
余りの変貌ぶりに大喜び!
エントマとしてもこんなに喜んでいると得意顔であったりする。
他のメイド仲間はそれはどうかと思ったりしている事もあるのだが、喜んでいるのだからと気にしない事にしている。
/// /// ///
その後、悪魔の諸貌で顔を変化させて見たり、デモニック・エッセンスによる変貌などで何とかご機嫌をとって見た。
・・・十数分後・・・
くぅくぅとご機嫌な様子で籠の中で眠る赤ん坊とは対照的に、短時間にこれほど
「まったく、これほど大変な事だったとは・・・」
一息つき、良く良く赤ん坊を観察してみる。
何となく気になり、赤ん坊が眠る揺り籠と、赤ん坊の寸法を確かめ始める。
初めて見た頃と比べ、格段に大きくなっている事に気付いた。
悪魔としては、相手の苦痛に敏感でなければならない。だからこそなのか、何処となく窮屈に見えたのだ。
「フム・・・」
徐に指を鳴らすと、
「・・・デミウルゴス様、何事でしょうか」
赤ん坊を
「
「はっ」
直に藤蔓の束が幾つか運び込まれた。
・・・数時間後・・・
途中、目覚めたりして作業が中断されたりもするのだが、その都度格段にあやす腕を上げて行くデミウルゴス。
そして完成した物を前に、その出来を確かめている。
「フム、これで良いかな?」
そっと、取っ手の付いたシッカリとした籐の揺り籠に赤ん坊を布団ごと移すと、銀のプレートメイルの尻尾の先に提げ、ゆぅらゆぅらと揺らし始めた。
ふと目が覚めたのか、風景の変化にキャッキャッと楽しそうに声を上げる赤ん坊。
・・・ ・・・ ・・・
その後、セバスが気付かない間にベビーベッドらしきモノに収まっていたり、見覚えの無い木製の玩具で遊んでいたり?
精緻に作られたそれらは、子供が怪我をしない様、細かな配慮がされていたとか。
いざそれで怪我をしそうになったとしても、その都度、知らぬ間に改修が現在進行形で繰り返されているとか。
・・・ ・・・ ・・・
デミウルゴス 悪魔の揺り籠? デミ小父様
信賞必罰。些細な失敗なのだが厳罰を求め、下された罰として、リュートを喜ばせる事=子守り。
当初は支配の呪言で「眠れ」と言ったが、まだ
試行錯誤の結果、尾にデミウルゴスお手製の、籐の揺り籠を引っ掛けてユラユラと揺らす事で解決。
その後も、木組みの玩具やベビーベッドなど、セバスの知らない内にモノが増えていったりしている。
それら全てが収まるナザリックの
注・ダザネックではありません、マジックバッグでもありません。
ソリュシャン・イプシロン もう一人の・・・ママ? ソルママ?
十月十日、人としては十分だが、竜人としては超未熟児で生まれた為、NICU《=新生児特定集中治療室》代わりに体内部で育成。
ちなみに出産時にも胎内から胎児を上手く取り上げた。
自身の一部をツアレの体内に侵入させ、胎児を自身の内に取り込み取り上げた。
育成後も偶に中に入れてとせがまれる事も? 主にルプスレギナとの追い駆けっこで、隠れ場所に・・・?
エントマ・ヴァシリッサ・ゼータ 良く遊んでくれるお姉ちゃん エン姉様
食べちゃいたい位大好き。《我慢して食べません》
「居ナイィ居ナイィ、バァー」が得意。
通常であれば、ひきつけ《=けいれん》を起すのだが、生まれたばかりの頃から見ているので見慣れている? 未だにせがまれる事多々?
偶に顔を持って行かれて困ってしまうのだが、可愛いので気にならない。
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