お~ば~ろ~ど・ミニマム

トータス

リュート・チャン 0歳~

第1話 ナザリック始まって以来の大騒動?

 それは唐突に始まった。

周囲の者全てが慌てふためき、右往左往し始める中。


「う、うぅぅぅ! はぁ! はぁ! はぁ!」


 何処からそんな悲痛な声が出せるのか、何処からそんな力を振り絞るのか、皆目見当もつかない。

だが、その苦しみを除く事も、そのこえをとめることも、誰にも出来なかった。


 そんな中、唐突に呼ばれ駆け付けたモノ。


「何か助けは必要ですか? キによる痛みの軽減などは?」

「駄目です! それがどんな事になるのか、皆目見当が尽きません! だから大人しくしててください! セバス様!」


 普段とは裏腹に、大いにうろたえ混乱の極みに達しそうなセバス。

そんなセバスに対し、大人しくしている様に言い放つペストーニャ。


「ですが、この様に苦しんでいるのに何も出来ないとは・・・」

「では、手を握って励ましてください!」

「わ、分かりました」


 物凄い剣幕でしかられ、言われるがまま、手を握っている事しか出来ないで居る。


「セ、セバス様」


 虚ろな目をして天井を見上げている。


「ツァレ、私はココにいます」

「セバス、様 セバス様!」


 目の前に居るのだが、痛みと苦しみの為にその目には映ってはいないのだろう。


「セバス、様ぁ! わ、私、この子を、どうしても!」

「はい、分かっています」


 ガッシと見た目よりも力強く掴まれた手を、セバスは優しく握り返す。


「う、ううぅぅぅ!」

「頑張って! もう少し! ・・・! ・・・不味い」


 陣頭指揮をとっているペストーニャの顔に焦りと不安の影がちらついた。


「な、何か?」


 それを見てとったセバスの顔に、言い知れない恐怖が宿る。

かつて、主に虚偽を申した時と同等の恐怖が。


「イエ、特に心配する事は・・・」


 それでもここは不安の炎を煽るべきではないと判断するペストーニャ。


「今は、私達を信じ、励ましていてください」

「わ、分かりました」


 それでも不安の色は隠せない。

その間にも、ペストーニャの頭の中で、様々な策が浮かんでは消え、幾つか思い当たる事が浮かんだ。


「・・・非常事態です」


 虚空へ向って唐突に喋り出すペストーニャ。緊張した面持ちで≪メッセージ/伝言≫を行使している様だ。


「外部の・・・人間をここへ呼ぶ事をお許しを。

・・・はい。そうする事しか・・・はい。では、お願いいたします」


 ふぅ、と一息つくと、


「あと暫くしたら、助力を得る事が出来ます。

それまでに如何にかするか、持たせますよ」


 そう言いながら、その場にいる全員の目を見回した。


「「「「はい!」」」」


 それからの時間は極短かく、数分にも満たない筈なのだが、その場にいる者には数時間の様にも感じられた。



   ・・・   ・・・



 部屋の外からは、バタバタとした足音と共に、『えぇい、道を開けよ!』『な、何じゃぁ! ここはぁ!』と声が響いて来た。


 その足音と声がこの部屋のドアに差し掛かり、バンッ! と勢い良く開かれた。


「ペストーニャ! 連れて来たぞ!」

「「「ア、アインズ様!?」」」

「な、何じゃ!? 何事何じゃ!」


 ポーションの調合実験中、部屋に突如として現れたアインズに掻っ攫われ、気が付けば化け物達の巣窟を駆け廻ってここに連れて来られた出産経験者であり、産婆としての経験も豊富なリィジー・バレアレ。


「とにかく、手を貸して頂きたい!」

「む? 出産か! ならばいたしかたなし!」


 唐突な出来事ではあるが、辺りを見回し事態を悟ると、リィジーの決断は早かった。


 暫くして、


「そこの髑髏! そこに突っ立ってないで湯でも綺麗で清潔な布でも持ってきな!」

「わ、分かった!」


 大鍋に水を張り、魔法で火を熾して瞬時にグラグラと湯を沸かすアインズ。


「これじゃ熱過ぎる! 赤ん坊を煮る気か! もっと冷まして!」

「コキュートス!」

「御前ニ」


 即座に部屋へと現れたコキュートス。


「この湯を冷ましてくれ」

「ハッ!」


 お湯を張った桶を受け取り、吐息を吹き掛けるコキュートス。

モクモクと立ち上っていた湯気が薄れ、パキパキと表面が凍りついた。


「冷まし過ぎじゃ! 凍りついとるだろう、このデカ物が!」

「・・・申シ訳ナイ」

「えぇい! 役に立てんのであれば、引っ込んどれ!」

「アインズ様に向かって、な、何たる暴言を!」


 流石の物言いに怒りを隠せぬデミウルゴス


「止せ、デミウルゴス。今、我々に出来る事が何も無いのも事実。黙って従え」

「はっ、ははっ!」



    ・・・   ・・・   ・・・



「・・・このままでは、母子共に持たん」

「それは?」


 どういう事かを聞こうとするペストーニャ。


「・・・この子は、人との子では無いのであろう?」

「・・・はい」


 それがどういう事か、人とは異なる血が混じり合い、もう片方の形質が良くない形で表れてしまった可能性に、ペストーニャは気付いた。


「どの様な児かは判らぬが、今は母体を優先すべきやもしれぬ」

「そ、それは! 如何にか出来ませんか!」


 セバスが焦った様に問い掛ける。


「・・・分からぬ。この様に消耗した状態であると、ポーションを使ったとて助かるかどうか。

子を取り上げる事は出来るが、その子が助かる保証もない」

「では、どの様にしたら!」

「出来る事と言えば、今回は子を諦め、次に備えるとしか・・・」

「イ、イヤです! わ、私は、この子を、産んであげたい!」


 それを朦朧としながらも聞き届けたツアレは、あらがった。


「ツアレ・・・ですが、このままでは貴女が」

「わ、私は、子供を抱き締めてあげたい! 抱き締めて上げる事が出来なくなるのは、イヤです!」


 同僚だった者達が自分の子を諦めなくてはならない姿を、辛さを見続けた過去が脳裏に浮かびあがっていた。


「じゃが! このままでは共倒れになってしまうぞ!」

「でも! ココで諦めたくない!」

「・・・えぇい! ワシは、無力なのか! せめて、傷付けずに直に子を取り上げる事が出来れば!」

「ならば、子供を無事に外に取り出せばいいのですか?」


 出産を手伝う為に側にいたメイドの一人が問い掛けた。


「ああ。じゃが、そんな事が出来る筈が無かろう? 人とは違う形状をした子をじゃ。

ここまで無事である事の方が奇跡じゃ」

「・・・では」



   ・・・   ・・・   ・・・



 紆余曲折の末、無事に赤子は取り上げられた。

だが、その子は産声を上げる事も、母親に抱き上げられる事も、できなかった。



   ・・・   ・・・   ・・・



登場者関係・・・人間、とは言い切れませんので


セバス×ツアレ【÷ソリュシャン】= リュート

 命名・祝福 アインズ  セバス=竜人 =りゅうと =リュートが良いんじゃないか? とアインズが口にした事から?


 異種族間による子供である為、多少は人間とは違う奇形気味

 所々に鱗、お尻の辺りに細長い尻尾、腰椎部分に小さな翼



セバス  父親

 どう接して良いのか戸惑い気味。だが、甘々。


ツアレ  母親

 可愛くて可愛くて仕方が無い。多少自分と違った所があっても好きな相手との子だから気にならない。

 セバスを陥落せしめた事で、陰でアルべド・シャルティア両名から個別に三顧の礼をもって《対アインズへの》教えを乞われた(大嘘)



アインズ  名付親  祖父的存在?  アーンス様【=上手く言えない】

 ナザリックの中で生まれた初めての赤ん坊だからと色々と気に掛けている。

 普段は威厳ある態度で接する。

 誰にも見られていない所では、抱き上げて見たり高い高ーいと、甘やかし気味。

 変装の為、マスクを被っていたりすると何だか変、とばかりにマスクを弄られたり?

それでも気が済むまでされるがままに、甘々で有る。



ヴィクティム  遊び相手?

 小さな翼で追い駆けっこしたり。どちらも浮遊して居られる位だから良い勝負?

 リュートが赤ん坊の頃、赤ちゃん語とエノク語での対話を繰り返し、何故か意味が通じ合うらしい。傍目には意味不明?

 その内容を尋ねるも、秘密です、との事。

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