爆乳ドリアードさんと【ちゅ~ちゅ~】してポーション屋さんを繁盛させる話。

@kmsr

第1話【異世界召還されたと思ったら追放されて婚約した】


 ある日、突然異世界に召喚された俺――佐々木俊和、20歳は一緒に召喚された5人の内で1番膨大な魔力を持っていた。



・佐々木俊和:レベル1

 HP 10/10 MP 1600000/1600000

 種族:人間 属性:無 職業:無

 筋力:5

 敏捷:4

 体力:5

 魔力:999

 器用:11

 幸運:2

 スキル:無



 お分かり頂けるように【魔力】だけが飛びぬけて高く、しかも【MP】がレベル1の時点で160万という規格外の数値を叩き出した。


 召喚された5人の中で当然のように俺は期待されて……。




 ◇




 1ヵ月後、城から叩き出された。


 確かに俺は高い【魔力】を持ち、膨大な【MP】を所有していたが――それを扱う為の【魔法】を一切覚えられなかった。


 俺に期待していた分だけ失望の度合いも高かったらしく今日ついに俺は城を追い出された。


「畜生。勝手に人を召喚して勝手に期待した癖に、役に立たなかったら追い出すのかよ」


 俺は憤慨したが――俺に出来る事は何もない。


 いくら【魔力】や【MP】が高くとも、それを使いこなす術が無いのではまさに宝の持ち腐れだ。


 着の身着のままで追い出された俺は仕方なくトボトボと歩き出して城を後にした。






 城から追い出された俺は金もなければ金になりそうな物も持っていない。


 食い物を買う事も宿に泊まる事も出来ないまま俺は城下街を抜けて街の外に出て――更にフラフラと歩き出した。


「こう……【MP】を攻撃力に変える【杖】とか【剣】があれば俺でも活躍出来たのに」


 そんな事を考えるが残念ながら城にはそんな都合の良い装備はなかった。


「……腹減ったなぁ~」


 街の外に出れば果物の1つくらい手に入るだろうという目算はハッキリ言って甘かった。


 そもそもの話、俺を含めた5人がこの世界に召喚されたのは【異世界から勇者を召喚して魔王を倒して貰う】という他力本願な事情な訳で、そもそも街の外が安全かどうかなんて保証がある訳がない。


「やっべぇ」


 街の中に引き返そうと思ったが、既にそれなりの距離を歩いてきたので街の姿は見えず、そもそもどっちから歩いてきたのかも分からなくなっていた。


「俺……詰んだかも」


 そう言いつつも、この時点では俺にはまだまだ余裕があった。




 ◇




 俺が城を出て3日が経過した。


 その間、水だけは見つけた川で確保出来たのだけれど――予想以上に食べ物が見つからなかった。


 試しに生えている雑草を食ってみたのだが……。




「おぅぇえぇっっ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」




 どうやら少量の毒成分が含まれていたらしく速攻で吐き出した上に腹を壊して余計に腹が減るという悪循環に巻き込まれた。


 2度と雑草に手を出すのは辞めると心から誓った。


 川があるのだから魚を取ろうと川の中に入って――速攻で足を滑らせて深いところに流されて溺れかけた。


「げほっ! げほっ! げぼぉっ!」


 大量の水と同時に色々と吐き出して、また体内の栄養が減った。


 しかも夜までに服が乾かなかったので一晩中ガタガタ震えて過ごす羽目になった。






 そして3日が経った今、俺は完全に余裕を無くしていた。


「(し……死ぬ)」


 既に声を出す事も起き上がる事も出来ずに俺は森の中で倒れていた。


 何で森の中に居るのかと問われても意識が朦朧としていたので覚えていない。


 そういえば道端で眠るよりは葉っぱに包まれて寝た方が暖かそうと思ったような気がしないでもない。


 ともあれ俺は現在、かなりマジに死に掛けていた。


 単純に3日の絶食というなら兎も角、余計な事をしまくったお陰で体力を急激的に奪われてしまった事が致命的だった。


 雑草や水と一緒に吐き出してしまった栄養が今は惜しい。


「(俺……こんなところで死ぬのかよ)」


 地面に倒れたまま俺はボンヤリと考える。


「(異世界に召喚されて……期待されて……失望されて……追い出されて……挙句に餓死かよ)」


 意識が朦朧として俺の20年の人生が次々と思い浮かんでは消えていく。


 それを【まるで本当に走馬灯みたいだなぁ】なんてボンヤリ考えて……。


「……い……やだ……」


 僅かに声が出た。


「し……にたく……ない……」


 力の入らない腕を無理矢理動かして地面を掴む。


「(こんな終わりは嫌だ。こんなところで誰にも看取られずに死ぬなんて……嫌だっ!)」


 恐怖や本能に急きたてられて俺は必死に地面を搔いてズリズリと滑るように森の中を進んでいく。


【何処に?】なんて事は考えなかった。考えられなかった。


 唯ひたすらに【ここに居たくない】という恐怖に追い立てられて前進して――30分ほどで完全に力尽きた。


「(あ……やば……もう……意識が……)」


 ここで意識を失えば死ぬと本能が激しく警鐘を鳴らしていた。


 けれど瞼の重さに抗う事も出来ずに俺は……。


「……?」


 意識が途絶える寸前に【それ】を俺の【嗅覚】が捕らえた。


「(なんだっけ? この……匂い)」


 感覚的に【赤】を連想させる匂い。


 確か日本にいた時は余り好物じゃなくて食事に出された時も良く残して……。


「っ!」


 そこまで思い当たった瞬間に文字通り最後の力を振り絞ってガバッと起き上がって目の前の藪を抜けた!


 そこの広がっていたのは小さな畑だった。


 そして、その畑になっていたのは赤い、赤い【トマト】だった。


「~~~っ!」


 何も考えずに本能のままトマトをもぎ取って貪り付いた!


「(う……うめぇっ!)」


 今の状況から考えれば味など二の次だと分かっていたが、それでも今まで食べた食べ物の中で今食べているトマトは間違いなくダントツに美味かった。


 当然1つで足りる訳もなく2つ目に手を伸ばして……。




「あぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!」




 その叫びに思わずビクッとトマトに伸ばしかけた手を引っ込めた。


「ドロボーっ! ドロボーなのですよぉっ!」


 畑に生っているトマトを無断で食べた訳だから全く反論出来ない俺は恐る恐る声の主に視線を向けて……。


「……へ?」


 そこに葉っぱを体に巻きつけた少女が居るのを見つけて困惑した。


 それは大変美しい少女だった。


 植物を思わせるような緑色の髪は長く、地面まで垂れ下がっていて――見ようによっては地面から生えているようにすら見えた。


 現在は俺を睨みつけて来る瞳も同じく緑――否、翡翠色で大変に美しい。


 そしてなによりも……。


「(で、でけぇっ)」


 葉っぱで作られた服を押し上げるダイナマイトな凶器。


「(DとかEとかいうレベルじゃねぇ。確実にGとかHまで届いてるよ、これぇっ!)」


 間違いなく今まで出会った女性の中でもっとも大きな胸の持ち主だった。


「むぅ~っ!」


 そこまで考えた時点で、やっと少女が未だに俺を睨み付けている事に気付く。


「え~っと……ごめんなさいでした」


 とりあえず全面的に俺が悪いのは事実なので土下座して謝る事にした。


「死にそうなくらいお腹が減っていたので我慢が出来ませんでした」


「…………」


「申し訳ありませんでした!」


 とりあえず地面に額を擦り付けるようにして謝る。


 そうして暫くの間、俺は頭を下げ続けていたのだが――少女の反応がないので恐る恐る頭を上げてみると……。


「……ヒメの作ったトマトは美味しかったですか?」


 そんな事を聞かれた。


「は、はい! 今まで食った食べ物の中で間違いなくダントツに美味かったです!」


 俺は正直に答えた。


「そ、そうなのですか♪」


 そうしたら何故か少女は機嫌を直してくれたようで……。


「も、もう1個食べるですか?」


「是非っ!」


 お腹いっぱいになるまでトマトをご馳走してくれた。






 その後、招待された彼女の家で話を聞くに彼女は【人間】ではなく【ドリアード】という種族らしい。


「ヒメの名前は【ユヒメ】なのです。趣味は植物を育てる事なのです!」


 一応【魔物】ではなく【精霊】の一種なのだと強く主張された。


「この畑のお野菜はヒメが大事に育てているのです! 大事なお野菜なのです!」


「はい。勝手に食べてすみませんでした」


「ん。分かれば良いのです♪」


 畑の野菜を無断で食べられるのは嫌だけど、ちゃんと許可と取って美味しく食べてくれるなら問題ないらしい。


「でも本当はヒメは【薬草】を育てたいのです」


 そうして大分打ち解けたら何故か悩み事を相談された。


「ヒメは本当は【調薬師】なのです。お薬を作るのが専門なのです」


「作れないの?」


「本当は作れる筈なのです。でも何故か毎回失敗してしまうのです」


「う~ん」


 彼女――ユヒメは文字通り命の恩人なので力にはなってあげたいが原因が分からないのでは解決のしようがない。


「ステータスは見られないの?」


 この世界はゲームのように個人でステータスを持っていて、特殊なアイテムを使えばそれを表示する事が出来る。


 城で俺のステータスを調べたのも、そのアイテムを使った為だ。


「それなら【鑑定石】を持ってくるのです」


 どうやらユヒメもそのアイテムを持っているらしい。


 そうして【鑑定石】で表示されたユヒメのステータスは……。



・ユヒメ:レベル3

 HP 23/23 MP 3/3

 種族:ドリアード 属性:植物 職業:調薬師

 筋力:13

 敏捷:3

 体力:12

 魔力:2

 器用:16

 幸運:9

 スキル:【調薬Ⅱ】【植物練成】【植物魔法Ⅰ】【吸収】



「……って【魔力】低くない?」


「そうなのです?」


 他の数値に比べても明らかに【魔力】と【MP】の値が低すぎる。


「ひょっとして、これが原因なんじゃないのか? 調薬する為の【MP】が不足しているとしか思えないんだけど」


「そ、そういえば調薬しようとすると、いつも力が抜けて気絶しそうになるのです!」


「……気付けよ」


 この子ちょっと――いや、かなり天然入っている。


 で。ちょっと気になったのが、この【吸収】というスキルだ。


「この【吸収】ってどんなスキルなの?」


「そ、そんな破廉恥な事を聞くのはマナー違反なのですっ!」


「え? 破廉恥なスキルなの?」


「これを使う為には【ちゅ~ちゅ~】しなくちゃいけないのです!」


「……【ちゅ~ちゅ~】」


「破廉恥な事を言ってしまったのです! 早く忘れるのです!」


 それがどんな行為なのかは分からないが想像以上に初心な子だった。


「方法は兎も角、どんな効果なの?」


「だから【ちゅ~ちゅ~】吸い上げるのです!」


「……何を?」


「色々なものをです!」


「…………」


 話が進まん。


「例えば俺から、その……【ちゅ~ちゅ~】して【MP】を吸い上げる事って出来ないの?」


「そ、そんな事をしたらトシさんが死んでしまうのです!」


 あ。俺の事は【トシさん】と呼ぶ事にしたのね。


「し、死んじゃうんだ」


「はいなのです! 【MP】が尽きたら今度は【HP】を吸い取ってしまうのです!」


「……ん?」


 何か変な事を聞いた気がする。


「もしも【MP】が尽きなかったら?」


「人間さんの【MP】は低いのです! 友達から聞いたので間違いないのです!」


「…………」


 とりあえずユヒメの【鑑定石】を借りて俺のステータスを表示する事にした。



・佐々木俊和:レベル2

 HP 9/12 MP 2300000/2300000

 種族:人間 属性:無 職業:無

 筋力:6

 敏捷:5

 体力:6

 魔力:999

 器用:12

 幸運:1

 スキル:無



「ば、化け物なのです!」


「酷っ!」


 一応、城で1ヶ月を過ごしたのでレベルが2に上がったのだけど、まさか【MP】が160万から230万に増えるとは思っていなかった。


「…………」


 後、よく見たら【幸運】が2から1に下がっとる!


 まぁ、城から追い出された上に餓死寸前まで追い詰められたからなぁ。


【HP】が少し減っているのは飢餓状態が長かった影響か?


「兎に角、これなら俺の【MP】を吸い取っても大丈夫だろ?」


「た、確かにその通りなのですが……【ちゅ~ちゅ~】するですか」


 良く分からないが余程ユヒメは【ちゅ~ちゅ~】するのが恥ずかしいらしい。


「ひ、ヒメは一人前の【調薬師】になるのです! だから頑張って【ちゅ~ちゅ~】するのですが……」


「が?」


「……ヒメは初めてなのです」


「…………」


 上目遣いで哀願してくるユヒメさんが超可愛いんですけど。


「せ、責任は取らせていただきます!」


「ほ、本当ですか? 約束なのですよ?」


「勿論です!」


 ユヒメの【哀願の視線】+【爆乳】に俺の脳は溶かされて自分でもどうかと思うほどに安請け合いをしていた。


「そ、それなら……やるのです!」


 そうしてユヒメは俺に迫ってきて……。


「むがっ……!」


 ぶつかるように俺の唇に自分の唇を押し当ててきた。






 後から聞いた話なのだが、別に唇同士じゃなくて粘膜接触なら何処でも良かったらしい。


 ともあれユヒメの柔らかい唇と舌の感触を味わいながら俺は幸せを感じて――この子も絶対に幸せにしようと誓ったのだった。






 ユヒメの言う【ちゅ~ちゅ~】である【吸収】を行った結果……。


「なんだか身体がポカポカするのです」


 ユヒメは体の火照りを感じているらしい。


 ともあれ結果を調べる為に俺とユヒメのステータスを【鑑定石】を使って調べてみる。



・佐々木俊和:レベル2

 HP 9/12 MP 2290000/2300000

 種族:人間 属性:無 職業:無

 筋力:6

 敏捷:5

 体力:6

 魔力:999

 器用:12

 幸運:1

 スキル:【エンゲージ】



・ユヒメ:レベル3

 HP 23/23 MP 10003/3

 種族:ドリアード 属性:植物 職業:調薬師

 筋力:13

 敏捷:3

 体力:12

 魔力:2

 器用:16

 幸運:9

 スキル:【調薬Ⅱ】【植物練成】【植物魔法Ⅰ】【吸収】【エンゲージ】



「わぁ~お」


 ユヒメ自身の【最大MP】には変化がなかったが俺の【MP】から丁度1万が譲渡されていた。


 それと今まで全く表示されなかった俺のスキル欄に見覚えのないスキルが増えていた。


「この【エンゲージ】ってのはどんなスキルなんだ?」


「はわわっ……!」


 ユヒメの方にも同じく【エンゲージ】のスキルがあるので何らかの共通のスキルだと思ったのだが、ユヒメはそれを見て顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。


「エ、【エンゲージ】は将来結婚する人が居るという証明なのです!」


「婚約者って事?」


「そ、そうなのです。や、約束通り……せ、責任を取って貰うのです!」


「…………」


 顔を真っ赤にして【あわわ……】と慌てているユヒメはそれはもう――可愛かった!


「責任を取らせていただきます!」


「は、はいなのです! 末永くよろしくお願いしますなのです!」


「こ、こちらこそ!」


 とりあえず――出会ったばかりだが俺は【ドリアード】のユヒメと婚約した。



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