うんちく娘と外食
小道けいな
油断ならぬ!
わたしの趣味は街歩き。
っていうことにしてある。まあ、最近そういう番組もあるし、市民権を得た感じはあるよね、街歩き。
旅行したいけど、お金と時間がないなぁと思っていたの。
そんなある日、旅行会社からもらってきたパンフレットを見たり、自分が住んでいる地域のではない全国紙の広告を見て気づいたことが一つあったのよ。
わたしが京都に行くのと同じように、京都の人がこっちに旅行でくるんだ!
つまり、旅行のつもりで自分が住む地域や電車でつながる大都市を回ればいい! 飛行機や新幹線で何万円と出さず、バスや鈍行で何時間もかけずとも旅行なのだ!
――言い訳というか。
でも、不況が続いたせいか、有期雇用の人が回りに多いせいか、わたしの発想はみんな持っている、持ち始めているということを後々知る。
まあ、ここまでノリノリで書いている割に、今回、旅行の話ではない。
でも、この旅行する気分の「わたし」がいなかったら入らなかった店もあるから、実は重要だったりする。
さて、グルメだ。食べ物の話である。
店の栄枯盛衰は都心だと言っても油断はならない。
例えば、老舗のソーメン屋が出しているお店が、気づいたら消えていた。もう一回行きたかったけど、冬はなぁとか、ちょっと遠いなぁと思っているうちに……。
別の店は「これでこんなするの? 微妙。それにメニュー表記がへんじゃない?」とわたしの中ですこぶる評価が悪かったところは今だにある。
まずいわけではないし、景気がいいところはいいからお金がある人も多いんだろうな、と分析するよ。
お店の個人の問題だけでなく、町の開発で消えるのもあるよ。
あー、でも、あのアイスやさんは……純粋に撤退だったのかな? 都心のお店は人たくさんいたけど。でもそのあと開発してたし……。
不確定なことは忘れよう、うん。
ああ、こんなこともあった。
東日本大震災の後のこと。福島の原発事故もあり、地面がゆがんだとか、建物の壁が崩れたというだけでも東京都心は観光客が消えた。
計画停電もあったし、軒並み食料品が消えたというのもあり、近隣の人も大変という時期だった。
なんか知らないけど、食パンを買いだめする人がいたらしく、朝食から食パンが消えた。
火を使うのが怖いという「仕方がない」って話もあったけど、デマじゃないかっていう理由もなんか聞いた気がした。
記録しない記憶は、残らない。
そのころ私は閑古鳥鳴く東京にいた。
ただ生活するならある意味人間的な営みがあったともいえる。
夜遅くまで人がいるということがないから。
閑古鳥が鳴く飲食店。
これで生き延びられればいいけれども、もともと大変だったところは打撃だったようだ。
あとで知ったのだけど、ね。
閑古鳥鳴くから、少しでも客を呼ぼうと、私の中でランチとしては価格が高いお店……がランチタイムのセットを出したのだった。
これは、もう、行くでしょ!
ちょっと会社から遠かったけど、一生懸命歩いたよ。
おいしいもののために。
急いで食べるからやけどしたけど……おいしかったよ!
何度か通ったけど、さすがに落ち着いたころには人が増えてあきらめたけどね。
地震からしばらくして、閉店すると知った。
元から経営がぎりぎりだったところに、耐震性工事等の費用がかさみ……ということ。
本店にあるパンケーキ、食べに行かなかった。
ちょっとわたしの行動範囲と違うところにあるから。
これも、油断してはいけないという例。
食べに行くのも街歩きの一環だと行けばよかったんだよね。
悔やんでも遅い。
消えた店は、よほどでない限り戻ってこないのだ。
まさに覆水盆に返らず。
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