第2章 萌えとエロ
こうした意見に食いついたのが萌えオタクの学友であった。
「どうせ今のアニメなんて似たようなもの」とか、一話だけ見て「やっぱり最近のアニメは見る価値無し」という態度が気に食わなかったようだが、作品を見る姿勢が根本的に違うのだからこれはどうしようもない問題だ。
逆に萌えオタが80年代のアニメを見れるのか?その場合も「絵柄が古い」やら「話数が多い」の一言で終わりではないだろうか?
しかし、「全ての萌えオタクがお色気目的で作品を見ているわけではない」と言う主張は注目すべき点であった。(萌え≠エロ)
宮崎勤事件以降のオタクバッシングの流れの中で、社会一般にはまだオタク=性犯罪者予備軍などと見られる負のイメージがある。
そして、昨今のお色気路線は製作者側が誤ったニーズ観で作っていると言うのである。
言われてみればお色気を求めるのであればAVで良いわけで、わざわざ規制される地上波アニメでやる必要はない。
「パンツアニメ」という一言にはたしかに萌えに対して一種の誤解のようなものを含んでいたかもしれない。
しかし、巨乳やパンチラと言った性的要素も萌えを構成する重要な要素である事も否めないし、同人誌即売会でもアダルト作品が人気という印象がある。
彼に言わせれば性的要素は付加価値に過ぎず、同人誌=エロもマスコミによる印象操作だという。
過度にお色気に走るアニメ業界の現状への不満は共有できたが、この点だけは最後まで埋まる事はなかった。
この「萌え原理主義」とも呼べる立場が、いわゆる萌えアニメの視聴者の中でどのぐらいの規模を持っているのか測れなかったからだ。
この論争を通して、お色気を含む萌え文化の方向性はむしろ萌えオタクという限定された人種以外に向けられているような気がしていた。
この論争を繰り広げた2010年、奇しくも東京都で青少年健全育成条例改正案が可決された。
単に表現の自由を阻害するという問題ではなく、
「性描写のあるマンガ、アニメによる青少年への悪影響、犯罪との因果関係が、
科学的、学問的な結論が至っていない現状で規制に踏み切るのは、本当に青少年のためなのだろうか…?」と条例への疑念の声が多かったのは性描写そのものは否定していない裏返しでもある。
アニメ会社、出版社、漫画家も大半が条例に反対を表明し、2011年の東京国際アニメフェアのボイコット、そして開催日同日にアニメ コンテンツ エキスポをぶつけると言う対抗処置を取った。
サブカルチャーという立ち場を考えれば行政によるこの程度の性表現規制はあってしかるべきだが、この対立構造はサブカル界の分裂を予期させた。
しかし、2011年に震災が起こり、東京国際アニメフェアは初まって以来の中止、アニメ コンテンツ エキスポも開催中止が決まり、問題はうやむやになったのだった。
※2012年と2013年は2つのイベントが分裂開催されたが、2014年からは統合されAnimeJapanが開催されている。
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