第5話運命の選択

私達は階段で上層階まで行くことにした。

その間にも、さくらはこの件に関する情報をくれた。

「ホントはバレたらその人には記憶操作が必要なんだけど…もしかしたら瑠花ちゃんには要らないかもね」

「さくら、それってどういう…」

「瑠花ちゃん、着いたよ。行こうか」

さくらにそう言われ前を見てみるとそこには厳重な警備のされたドアがあった。

そのドアを開けると、小難しい顔をした青年と柔和な表情の老人が待っていた。

「…〈歌姫〉、その娘が瑠花か?」

「そうだよ、和人さん。こっちが瑠花ちゃん」

「そうか…」

そうとだけ呟くと和人はこちらへ近づいてきた。

「すぐに済ますからな、動くなよ」

私はこの時点で軽く引き腰だった。

「和人さん、ちょっとだけ待ってください。まだ記憶消去するのは早いですよ」

「そうじゃよ、せっかちは嫌われるぞい。かず坊」

「おじいちゃんはもう嫌われてるけどね」

「んなっ!…まぁ、いい。それでさくらちゃん、やっぱり受けてもらうのか?を」

「まぁ、それが一番手っ取り早いしね。あと、人員補充も出来るからねー」

試験とはいったい…

私がそんなことを考えているとさくらが声をかけてきた。

「大丈夫、瑠花ちゃんなら絶対に出来るから」

そう言われて連れてこられたのは機械の人形が一体いるだだっ広い部屋だった。

「今からこの魔術人形と戦ってもらう。但し、戦場投入用だ」

魔術人形には大きく分けて三つの種類がある。

一つが訓練用。もう一つが一般生活用。そして最後の一つがこの戦場投入用だった。

「分かった。やります」

私は覚悟を決めてそんなことを言った。

「分かった、では早速始めよう。分かっているとは思うが、致命的なダメージを受けた時点で終わりだからな」

ふむ、そこは学校で使うような訓練用と変わらないようだ。

「では、私たちは外から見ている。まぁ、がんばってくれ」

さくらたちが部屋から出た瞬間、魔術人形が動き始めた。

機械とは思えない程の俊敏な動き。

(速いっ!やっぱり訓練用とはちがうか…)

「【オーバードライブ】!」

自身の身体の機能を一時的に底上げして、

「からの、【クイックスタンス】!」

自身の行動速度を上げる魔術をかける。

これで、なんとかいける!

そう思ったときだった。

「――【ブレイズノヴァ】――」

無機質な機械音声で魔術を発動させた。

「えっ…?」

一瞬思考が止まる―

考えられたことは一つだけ…

そう思うと反射的に身体が動き、紙一重でかわしていた。

半瞬遅れて着弾する炎弾。

私は爆煙に紛れ、私は魔術人形あいての背中に回り込んだ。

引き絞る右腕、全身をバネのように使い頭部を思いっきり殴りつけた。

常人なら気絶昏倒してもおかしくない一撃を耐えきった。

(なんで…普通なら致命的なダメージで終わりのはずじゃ…)

そこまで考えて一つの結論にたどり着いた。

「そうか…物理耐性の魔術か!」

その瞬間、魔術人形あいては 私に向かって上段回し蹴りを放ってきた。

「ちょっ!」

咄嗟に身を捻り、かわす。

しかし、魔術人形あいての攻撃は止まなかった。

次いで二撃、三撃と続く体術。私はそれを捌き、防いでいく。

そして、一瞬の隙をついて全魔力を込めた一撃を魔術人形あいての頭部にもう一度ぶつけた。

その一撃は魔術防御を破り、行動不能にした。そのかわりに私を待っていたのは魔力の欠乏だった。

霞む視界。ふらつく足元。意識が遠のく数瞬前私は誰かに支えられ、そのまま意識を失った。


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