第4話

婚約者登場から数日後、私の歓迎会が催された。


「それじゃ、飯野ちゃんに乾杯‼︎」


「 「 「カンパーイ‼︎ 」 」 」


社員の殆どが集まってくれ、私の歓迎会が始まった。


「飯野さん、会社慣れた? 」


「あ、小宮さん。 はい、お陰様で段々慣れてきました。 まだまだですが……」


「そんな事ないよ? ホームページの案、助かったし。 すっかり場に馴染んでるよね」


「またまたぁ。 私なんて皆さんの足を引っ張るだけで……」




ビールにカクテルとどんどん飲まされ、私は上機嫌になっていた。


「おい小宮。 あんまり飲ませるな」


「社長。 歓迎会ですよ? いいじゃないですか」


向かいの席に座る社長に小宮さんが言った。

小宮さんは私の右に座り、持田さんは左に座っている。


「小宮が送って行けばいんじゃない?」


「勿論送っていくよ?」


「大丈夫です。 私一人で帰れますよ?」


「いや。オレが送る……」


社長のそんな言葉に皆驚いた。

勿論私もだ。社長がそんな事を言うなんて……。


「社長は婚約者がいるんですよね? 誤解されますよ?」


「問題ない。 社員を送るだけだ」


「まぁ、小宮。 社長に任せれば? 取り敢えず飲もう!」




今夜は無礼講。そんな感じで歓迎会は行われ、無事お開きになった。



「飯野、立てるか?」


「はいぃ。 大丈夫です」


「家は駅の反対側だな?」


「すみません社長……。 ご迷惑おかけします」


「問題ないと言っただろう」


「ですが……」


「遠慮するな」




二人で店を出て、駅まで歩いた。

何だろう。お酒のせいかドキドキが止まらない……。


「小宮はいい奴だが女癖悪くてな。 もしもがあったらそれこそ問題になる。 オレは社長だから……問題ない……」


「社長は優しいです。 でもその優しさが時には裏目に出ますよ?」


「どう言う意味だ?」


「さあ……」



社長だから送っても問題ないのはわかっていたはず。なのに改めて言われるとちょっと悲しくなった。


婚約者がいるのは分かっているのに……。




家までの道をほぼ黙ったまま歩いた。

何を話せば良いのか分からないし。



黒い空に月がまん丸浮かんでいて、心地よい風が時折吹くのに、私は何故か複雑な気持ちだった。




「ありがとうございました。 お気をつけて帰って下さい」


私の自宅アパートへ付き、お礼を述べた。


「ああ。 お疲れ」




社長を見送り部屋に入ってシャワーを浴びた。

それからミネラルウォーターを飲み、ベッドに潜りモヤモヤする気持ちを抑えた。

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