※ 飛田新地——って観光スポットなの?

飛田新地とびたしんち」って今じゃ、大阪の観光スポットらしい———。


 大阪には、昔ながらの「赤線」と呼ばれる地域がある。


「赤線」とは、GHQによる公娼廃止指令(1946年)から、売春防止法の施行(1958年)までの間に、半ば公認で売春が行われていた日本の地域である。赤線区域、赤線地帯などとも。(引用:ウィキペディア)


大阪、阿倍野の「飛田新地」もその一つである。


 場所的には、今の「ハルカス」の南西方向かな。じゃんじゃん横丁を抜けた辺りなんだけど、記憶に薄い(なんせ、行ったのはもう数十年前のことなんで 笑)


 雰囲気的には、温泉宿街って感じで、その一帯に一歩足を踏み入れると、「時空移動」した感じである。


 多くは二階建ての温泉宿みたいになっていて、一階の玄関の三和土に、おばちゃんが椅子に座って客引きをしている。


 ——にいちゃん、にいちゃん、今座ったばっかりやでっ!


 みたいな感じで、おばちゃんの後ろに座ってる女の子を売り込む。


 このシステムが、現代の風俗産業とはちょっと違って、興味深いのだろうか、結構地方から大阪に観光にやってきた若者や、海外からの(韓国、台湾、中国)観光客にも人気らしい。

 現在の料金システムがどうなのかは、知らないけど(ネットで多く紹介されてますんで、そっちを参照してくだされ)、拙者が行った頃は、そりゃまー、なんっていうかレトロで、味わいのある場所だった、と記憶している(ここら、ちょっとボヤかして語る拙者でござる)


 確か、五千円で十五分プレーだったと思う。

 それも、だっ、座布団二枚だけで、だよ(笑)———つまり布団なんか無いわけで。(今、現在どうなってるかは知らんけど)


 ただ、はっきり覚えているのは、十数軒見てまわったけど、どこの女のこも水準高くて、迷ったのを覚えている。みんな可愛くて、別嬪さんなのだ———。


 今、風俗業界も生き残りが厳しく、そこで働く女性も手取り額がどんどん下がっているらしい。昔のように、3年我慢すれば、家が建つ——、って時代じゃなくなったようだ。昨今は、奨学金の返済に困った女子大生とか、生活費の足しにと主婦が働くことが多いらしいけど、時給に直せば、コンビニの深夜勤務にちょっと毛が生えた程度らしい。なんとも、世知辛い話である。


 件の飛田新地で、お気に入りだった女の子の話を聞けば、「売られた」ってことだった。カレシがヤクザで、金に困ったのか、なんかの「落とし前」に使われたのか知らんが——

 五年の奉公契約で売られてん——って、明るく笑って言ってたんだけど、拙者はなにも言葉をかけられなかったので、ござるよ。(ってか、誰?)


 そんな、こんなで、例の「温泉宿」の二階には、女のこたちの悲哀とか、辛い運命みたいなんが、いっぱい漂ってて、ことを終えて、細い急な階段を降りて行く時は、いつも背中に変な空気がへばりついてたのが、今となっては懐かしい話で———ござる。



 観光スポットだって?


私には、そんな風な陽の当たるイメージはないな……

饐えた匂いと、日に焼けた畳、薄っぺらい座布団。そして悲哀に満ちた女の子の笑顔しか、思い出せない————。

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