麻衣ルート最終話 絶えぬあの日の誓い
「おはようございまーす!」
俺は堂々と三原家の大広間へ入室すると、そこにはすでに麻衣、お義父さん、黒瀬さんが正座して待っていた。
「おはようございます、誠さん」
「おお、愛しの麻衣よ。今日も変わらず可愛いぞ」
「誠さん……朝から恥ずかしいですよ……」
「本当のことだから、仕方ないさ」
「もう……誠さんに言われたら、嬉しくなって、顔赤くなっちゃうんですから……。――ちゃんと宿題はしてきましたか? 学年が1つ上がったのですから、前より――」
「まあまあ、細かいことは学園に着いてからでいいじゃん。そういうことは昨日、紗智に死ぬほど言われて、耳にタコなんだよ」
「誠、おめえそんなことで責任取れるのかよ?」
お義父さんは俺のことをキッと睨みながら、尋ねてくる。
「お任せを、お義父様」
「誰がお義父様だ――と言いたいところだが、おめえと麻衣はもう婚約済みだから、そうも言ってられん。認めたくないがよ」
「そんなこと言わないでくださいよ。これからはお義父様とも一緒なんですから、もう少し仲良くしてくださいよ」
「アホ言え。あの日、おめえが麻衣をさらったせいでカワウソからの重圧がかかってるんだぞ?」
「だから、その責任を果たすために、俺が三原家に婿入りし跡継ぎになって、カワウソを跳ね返すほどに三原家を磐石にするって、約束したじゃないですか」
「俺がどれだけそのことで頭抱えてると思ってるんだ。――ったく、黒瀬! おめえもだぞ?」
「承知しております。この黒瀬、誠様に責任を果たしていただくために、全力でサポートさせてもらいます」
「ふん……! それと誠? もう1つの約束も忘れてねえだろうな?」
「わかってますよ。麻衣を一生幸せにすることでしょ? 言われなくたって、そうするつもりですよ」
「誠さん……」
麻衣は俺の言葉に頬を赤く染める。
「なんで俺はこんな判断をしちまったんだろうか……」
お義父さんは頭をポリポリ掻きながら、ため息をつく。
「大舟に乗ったつもりでいてください。というわけで朝の活力を――」
俺は恥ずかしげもなく、麻衣の頬にチュッとキスをする。
「もう誠さんったら……私も元気になるじゃないですか」
「へへへ……」
俺と麻衣のやり取りを見て、お義父さんはプルプル震え出す。
「――黒瀬!」
「はっ!」
「あれ持って来い!」
「ここに!」
「やっぱり、おめえは地獄に叩き落としてやる! そこ動くんじゃねえ!」
いつもの調子でお義父さんは日本刀を引き抜き、俺に向けてくる。
「お、お父様! 落ち着いて!」
「おわっと! そ、それでは俺たち、学園に行ってまいります! 行くぞ、麻衣!」
「え、あの――わああ!」
俺は軽々とお姫様抱っこの要領で麻衣を抱え、走り出す。
「待たんかー!」
「うおお、相変わらず、すげーパワフル」
「誠さん、私1人でも走れますから――このままじゃいずれ――」
「心配するなって」
「え?」
「麻衣と一緒ならどんなことだって苦じゃない」
「誠さん……」
「愛する麻衣と一緒にいられるんだから、苦しいことなんてないんだ」
「はい! 私も……私も大好きな誠さんとなら、どこまでだって、どんなときだって平気でいられます!」
「こらー! 逃げるでない!」
「おっと、このままじゃ追いつかれそうだな。麻衣、少し力を分けてくれ」
「はい、どうぞ」
俺に対し、無防備に晒す麻衣の唇を奪う。
「んちゅっ……んんっ」
「き、き、貴様ー! 何度も見せつけおって!」
お義父さんの言葉なんて耳に入ってこず、俺たちは幾度となく触れ合わせる。
「んっ、はあ……」
惜しみながら、顔を離すと麻衣は笑顔で尋ねてくる。
「元気、出ましたか?」
「おーし、元気満タン! 全力だー!」
「ふふっ、誠さーん! いつでも私がついてますから、思いっきりいってくださーい!」
「おう!」
俺は麻衣を抱えながら、持てる力全てを使って走る。
「ふっ、ふふふふ……!」
「あはははは!」
どんなことにだって障害や困難はある。それは小さいことかもしれない。見上げてもわからないほど高く険しいものかもしれない。
でも、挫折することなんてない。するわけがない。隣に守るべき――愛すべき人がいるんだから。その人さえいれば、どんなことも苦痛に感じない。それを知ってしまったから、俺はなににでもチャレンジ出来るんだ。
「ねえ、誠さん?」
「どうした?」
「ずっと、いつまでも……愛しています!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます