麻衣ルート17話 自分だけの純白
「――さん」
「……ん」
「――いさん」
「……んんう」
「誠さん!」
「ん……はっ! ま、麻衣か――って、あれ?」
目を覚ましているはずなのに、なにも見えない。自分が横になっていることと、肌に感じるのがもふもふした柔らかい感触だということだけはわかった。
「誠さん、私が見えますか?」
「すまん、なにも見えないんだ」
「多分、麻酔の効果ですね。もう少ししたら見えるようになると思います」
「麻酔って……俺はもう目覚めてるぞ?」
「三原家で開発した特製麻酔なんです。意識を失うだけでなく、覚醒した後も一定時間視界を遮る効果があります」
「ちょっと恐ろしいんだけど……」
「後遺症などは残りませんので、ご安心を」
「ところで、ここはどこなんだ?」
「私の実家です」
「そうなんだ……このもふもふとした感触はなんだ?」
「えっと……お布団です」
「へえ、布団……布団!?」
「実家に戻ったら、この部屋に通されて、迎えの者が誠さんをここまで運んでくれて、寝せてくれたんです」
「そんなことが……」
「誠さんが横になっているのを見てたら、誠さんの家で一緒に寝たのを思い出して、私も――」
ということは麻衣は俺のすぐ傍に――
「あれ……?」
視界が――
「どうされました?」
「あ……麻衣」
目の前にいる愛する女の子の姿に一瞬で心を奪われる。純白に包まれたその衣装は紛れもなく、ウエディングドレスだ。
「誠さん?」
「キレイだ、麻衣」
「誠さん、目が――」
「え、あ、ああ。やっと見えるようになったよ」
「よかったあ……」
「それで見とれちゃってた」
「え?」
「麻衣の姿に」
「は、恥ずかしいですよ……」
「本当のことだ。それにこうやってまた麻衣に会えて、俺はすごく嬉しいんだ」
「私も誠さんと同じ気持ちです。でも――」
「ん?」
「なぜ来たのですか?」
「…………」
「こんな無茶なこと――もし、誠さんの身になにかあったら……」
「麻衣が好きだからだ」
「え――」
「俺は今までもこれからもずっと麻衣を好きでいる。麻衣に降りかかる障害はなんであれ取り除く。麻衣が抱えきれないことは、俺がいつでも支えてやるって言っただろ?」
「誠さん……」
「だから、ここへ――麻衣のもとへ来たんだ」
「…………」
「俺の麻衣への気持ちはなにものにも負けない。俺が麻衣を連れ出したせいで今後困難なことが起きようとも、麻衣と一緒にいれるのなら恐れるものはない」
「誠さん……んっ」
俺と麻衣は誓いをたてるように口づけをする。
「あ……誠さん」
「……好きだぞ、麻衣。いつまでも、愛してる」
「私も大好きです、誠さん。ずっと……ずうっと、あなただけを愛し続けます」
永遠とも思えるほど長い時間……俺たちはキスをした。優しくて、温かい……胸に感じたのはそればかりだった。
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