第230話 大願と災厄の始まりⅢ

「ジィィィィィィ!!」


 オ・ケラは右前脚を光り輝かせ、私に突っ込んでくる!


「爆発の爪か、《炎の角》、《斬撃》!」


 私は炎の斬撃をオ・ケラ目掛けて撃ち放つが、オ・ケラは空中で身体を回転させ斬撃を回避する!


「ジィィィッ!」

「ちぃぃっ!」


 私は炎の角でオ・ケラの右前脚を受け止めた瞬間、爆発が起きる。


「ぐぅぅぅぅ!」


 私は後退りながらも、態勢を崩さずにオ・ケラの次の攻撃を警戒、対してオ・ケラは爆風で後ろに飛び、民家の壁に引っ付いた。


「ジィィィィィ……」

「……ミミズさん、皆を連れて先に城に行ってくれ」

「何を言う、今ここに居る全員であ奴を確実に仕留めた方が良いじゃろうが!」

「確かにね……でも今はオ・ケラだけに構っている場合じゃない……ガタクの安否も気になるけど、またブラッドローカストが襲ってくる可能性もある、今優先すべきなのはオリーブと傷を負ったバノンの安全を確保するために城に行くことなんだよ」

「……それはそうじゃが……」

「ジィィィィィィィィィッ!」


 私達が話す中、オ・ケラが壁を蹴り跳ねて私に近づき、左前脚を振り下ろす!


「っ! ……おらぁっ!」


 私は炎の角で受け止めそのまま投げ飛ばすが直ぐに態勢を整え、再び民家の壁に付いた。


「ジィィ……ジィィィ!」


 そしてまた蹴り跳ねると、オ・ケラは私目掛けてではなく右側の民家の壁に跳び付いたと思った瞬間、直ぐに別の壁に跳んで移動、そしてまた別の壁にを繰り返し、私の周囲を高速で跳び回る!


 くっ……これでは何処から攻撃が来るか分からない!


 私は何とか目でオ・ケラの動きを追おうとするが、速過ぎて目が追い付かない。


「ジィィィ!」

「後ろじゃ!」


 ミミズさんの言葉で私は振り返ると、オ・ケラの左前脚を光らせて飛び掛かって来る!

 私はギリギリ角で左の爆発の爪を受け止めるが、再び爆発が起き、私は吹き飛ばされてしまう!


「ぐああああああっ!?」


 オ・ケラは爆風を利用して近くの壁に飛び付き、両前脚を輝かせて再度私に向かって跳び掛かって来る!


「ジィィィィィィィッッ!!」

「っ……!」


 私は翅を広げて態勢を整え空中で静止するが、一歩早くオ・ケラが私の懐に入る!

 駄目だ、間に合わない……!


 オ・ケラの両前脚の爆発の爪が私の腹部に直撃――



(《斬撃》!)


 ――しようとした瞬間、オ・ケラ目掛けて斬撃が飛んできた!


「ジィィィィッ!?」


 オ・ケラは私への攻撃を止め、翅を開いて斬撃を回避、そのまま着地し斬撃の飛んできた方角を見る。


(《岩の大鋏》ィッ!)


 するとその方角から岩の巨大鋏がオ・ケラを攻撃するが、オ・ケラは両前脚で鋏を防ぎ、後ろに跳んだ!


(《水鉄砲》っ!)


 更に水の球がオ・ケラ目掛けて撃ち出されるが、両前脚で受け止め弾き、壁に退避した。


(ちぃっ、弾かれたか)

(主殿、ご無事ですか?)

(俺、ご主人無事か、言う)

「カヴキ、ソイヤー、テザー……その姿は……」


 そう、私を助けてくれたのはカヴキとソイヤーとテザーだったが、三匹とも姿が変わっていたのだ。

 カヴキは全長が二メートル半となっており、両手の鎌がより大きく鋭い形になっている。


 ソイヤーは体長が2メートル程になり、身体の白い筋模様は残したまま、全身が白金色に輝いている。

 テザーは鋏を含めて3メートル程となり、尻尾の鋏がより大きくなっていた。


(全身から力が湧いてくるぜぇ……)

(先程の戦いでレベルが上がり、我等は進化したのです)

(俺、更に強くなった、言う)


 私は二匹を鑑定し、ステータスを確認した。









 ステータス

 名前:テザー

 種族:グラップルテールシザー

 レベル:1/100

 ランク:A-

 称号:魔王のしもべ

 属性:地

 エクストラスキル:剛力鋏、岩の大鋏






 ステータス

 名前:ソイヤー

 種族:プラチナロングホーンビートル

 レベル:1/100

 ランク:A-

 称号:魔王のしもべ、伐採者

 属性:風

 スキル:斬撃、斬撃耐性、剣技

 エクストラスキル:剛力鋏、






 ステータス

 名前:無し

 種族:タイダルギャング

 レベル:1/100

 ランク:A-

 称号:魔王のしもべ

 スキル:昆虫の重鎧、水鉄砲

 エクストラスキル:水の鎌、馬鹿力










 グラップルテールシザー、プラチナロングホーンビートルにタイダルギャング……三匹ともA-に進化したのか……


(主殿、ここは我等にお任せを)

(この野郎の相手は俺達がします)

(俺、ご主人先に行って、言う)

「お前達、何を言ってるんだ! 進化したからって勝てるほどこいつは甘い敵じゃない!」

(百も承知です、ですがこいつのために時間を浪費している暇もないのも事実です)

(俺達がこいつを足止めするから、ご主人は姫さんを連れて行ってください)

(俺、ご主人早く行って、言う)

「お前達……分かった、ここは任せる……だけど絶対に死ぬんじゃないぞ! 分かったな!」


(((はい!)))


 私はソイヤー達にこの場を任せ、ミミズさん達と共に城に向けて再び移動を開始した。


「! ジィィィィィッ!」

(《斬撃》!)


 私を追おうとオ・ケラが翅を広げようとするがソイヤーが斬撃を放ったため、瞬時に壁から跳び回避、地面に着地し、忌々しそうにソイヤー達を睨んだ。


「ジィィィィィ……!」

(貴様の相手は我々だ!)

(その金属の前脚を切断してやるぜ!)

(俺、ぶっ殺す、言う!)


「ジィィィィィィィッッッ!!」

(《斬撃》ぃ!)

(《水の鎌》っ!)

(《岩の大鋏》ィッ!)


 オ・ケラが両前脚を光り輝かせて跳ぶと同時に、ソイヤー達は一斉に攻撃を開始した!









 ――背後から爆発音が聞こえてくる。


「ソイヤー、カヴキ、テザー……オリーブ達の安全が確保出来たらすぐに行くからな……」


 ソイヤー達の心配をしながら、私達は城に向かって真っ直ぐ進んで行く。

 今の所ブラッドローカスト達の襲撃は無い、奴らが襲い掛かってこない内にオリーブ達を城に送り届けなければ……


 そう思った時、前方の空中に亀裂が二つ現れた!

 私達は立ち止まり、戦闘態勢を取る。


「ええいまたか!」

「今度は一体何が出てくる……」


 警戒しながら亀裂を見ていると、それぞれの亀裂から敵が一匹づつ姿を現した。


「な……あれは……!」

「何じゃと……」

「嘘やろ……」

「お前達、は……」


 その姿を見て驚いたのは私だけでなく、ミミズさんとゴリアテ、ゴールデンも驚愕の声を上げた。

 現れたのはメタリックグリーンがかった虹色のボディを持つ甲虫と、毒々しい黄色と黒のマダラ模様を持つ虫だった。


「ニジイロクワガタに、ジョロウグモ……!?」


 そう、現れた二匹はニジイロクワガタにジョロウグモであった。

 私はこの二匹を知っている……転生前の知識でも勿論だが、以前に視た事があるのだ。


 そう、ミミズさんの記憶の中で。


「……レインボー、ウィドー……お主達なのか?」

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