第141話 不死鳥伝説を追えⅣ
―先程の村から移動し始めて数時間が経過した。
「歩けど歩けど何も無いのう……バノン、他の村には何時になったら着くんじゃ? やはり年による呆けかのう」
「だからそんな歳じゃねぇって何度も……!」
「二人とも喧嘩は止めてくれよ、しかし本当に何も無いな……」
この数時間歩いたが、村どころか生き物一匹も見ていない。
しもべ達も大分疲れているようだな……日も落ちてきて、暗くなり始めた。
「よし、今日はここで野営しよう。」
私達は簡易的なテントを作り、食事を取った。
メニューはグリーンローカストの丸焼きと大樹海に自生していた木の実だ。
「そう言えばミミズさん、魔鳥王って普段はどんな感じだったの?」
「む? そうじゃのう……あ奴は普段は冷静でのう……かと思えば妙にユーモアがあったりして……まあ何考えてるかよく分からん奴だったぞ」
「何考えているか分からない奴って……結局どんな奴なのか分からないじゃないか……」
ミミズさんの情報って結構役に立たないモノが多いんだよなぁ……まぁ今に始まった事じゃないけど。
「確か魔鳥王は未来と過去を視るって言ってたけど、ミミズさん達の過去と未来も視てたの?」
「うむ……大分昔に、儂と魔獣王が明日二日酔いで苦しむと言われたのじゃが、本当に二日酔いになったわ……」
「……いや、そう言われたならまず酒飲むなよ」
「いやーあの時は盛り上がってのう……」
結構割とどうでもいい未来も見てたんだな……ん?
「ミミズさん、魔鳥王って何百年ぐらい先まで視れるの?」
「? いやそこまでは知らんが……急にそんな事を聞いてどうしたのじゃ?」
「ふと思ったんだけどさ……ひょっとして魔鳥王ってさ……」
「うむ」
「ミミズさんが死ぬ未来を視てたんじゃないのかな」
「うむ………………ん? なぬぅ!?」
ミミズさんは驚きのあまり声が裏返っていた。
「魔鳥王が儂の死を見ていたじゃと!? それはどういう事じゃ!」
「落ち着いてよミミズさん、もし魔鳥王が何百年先の未来も視れるのなら、ミミズさんが死ぬことを大分前から知っていたのかもって思ってさ」
「じ、じゃがお主の言う事が本当だった場合、魔鳥王は儂にその事を伝えなかったと言う事になるのじゃぞ!?」
「だから落ち着いてよミミズさん」
「これが落ち着いていられるか! こうなったら魔鳥王を見つけ次第、問い詰めてくれるわ! 覚悟しているがいいあの鳥野郎めが~……」
ミミズさんは魔鳥王探しにより一層やる気を燃やしていた。
「さて、食事も済ませたしそろそろ休むか……ん?」
テントで休もうと動いた時、前方に生物の姿が見えた。
「皆、あそこに何かいるぞ!」
「ヤタイズナよ、向こうにもおるぞ!」
「こっちにもいやがるぞ!」
周囲を見渡すと、幾つもの生物が私達を取り囲むように動いていた。
どうやら食料の匂いを嗅ぎつけてきたようだ。
私は炎の角で周りを灯し、その生物の姿を見る。
「! あれは……サソリか!」
私達を取り囲んでいた生物は、体長は1メートル70センチ程で、黄色い身体に太く大きい尻尾を持っているサソリだった。
この見た目は恐らくイエローファットテールスコーピオンだな。
北アフリカに分布する尾の太い中型のサソリ。強い毒を持ち、死亡例もある危険な種だ。
ペットとしての人気は高かったが、法律により研究施設等以外での飼育は禁止されてるのだ。
私は鑑定を使いイエローファットテールスコーピオンステータスを確認した。
ステータス
名前:無し
種族:イエローファットテールスコルピオン
レベル:20/50
ランク:B
属性:地
スキル:毒耐性、砂漠適性、砂球
エクストラスキル:猛毒の針
Bランクか……数は10から15匹ぐらいだな。
(わー! ぼくとおんなじすがただー! こじゅじんのいうとおりだったよー♪)
(呑気な事言ってないで、戦う準備をしろ!)
(俺、奴らぶっ殺す、言う)
(全員食べてやりますわ)
(ようやく獲物が出てきましたか……これで主様に肉団子をお作り出来ますね!)
(僕は後方から皆さんを支援させていただきますね)
(全員、戦闘準備であります!)
『ギチチチチチチィィィィィィ!!』
(面倒っすけど……とりあえずやってやるっすよ)
「ミミズさん、バノン、テントの中に隠れていてくれ」
「分かった」
「さっさと片付けるのじゃぞ!」
ミミズさんとバノンがテントに隠れると同時に私はイエローファットテールスコルピオンに突進する!
「ギシィィィィィィ!」
数匹のイエローファットテールスコーピオンの口の周りに砂が集まって玉状となり、私目掛けて撃ち出してきた!
「《炎の角》!」
私は空を飛んで砂球を回避し、そのまま炎の角でイエローファットテールスコーピオンを焼き切る!
「ギシィィ!」
「させるか!」
イエローファットテールスコーピオンが私目掛けて尻尾の毒針で私を刺そうとするが、私は炎の角で尻尾を切り落とした!
「ギシィ!?」
「はぁぁっ!」
そのまま私はイエローファットテールスコーピオンを焼き切り、次のイエローファットテールスコーピオンと戦う。
(喰らえ、《斬撃》!)
(《岩の鋏》! 死ねぇ!)
(えーい!)
ソイヤーが斬撃で攻撃しつつ、テザーが岩の鋏でイエローファットテールスコーピオンの身体を挟み動きを止め、その隙にスティンガーが毒針を突き刺す! 見事な連携だ。
「ギシィィィ!」
(あんまりきいてないみたいだよー!)
(ならば私達が!)
(真っ二つにしてやるぜぇ!)
(《混乱の鈴音》!)
(《花の鎌》!)
「ギシ!? ギシィィィィィィ!」
「ギシィィィィィ!」
ベルの鈴音によって、イエローファットテールスコーピオン達が仲間割れをし、花の鎌でどんどんカトレアの元に集まってくる。
(《岩の大顎》!)
ティーガーの大顎に岩が纏われ、巨大な岩の大顎が形成された。
(主様のために死ぬがいい!)
「ギシィィィィィ!?」
ティーガ―は素早い動きでイエローファットテールスコーピオンの背後に回り込み、その巨大な岩の大顎で挟み潰した!
(さぁ、主様のためにどんどん肉団子の材料を集めなければ!)
綺麗な姿に反して殺し方が中々にエグイ。
流石はハンミョウ、あの凶暴性は頼りになるな。
(《鎌鼬》!)
「キシィィィィィィ!?」
ドラッヘの鎌鼬でイエローファットテールスコルピオンが切り刻まれていく!
(敵の尻尾に注意しつつ確実に追い詰めるであります!)
『ギチチチィィィィィィィ!!』
レギオンの見事な統率により、アント達はイエローファットテールスコーピオンを追い詰めていく。
私も次々とイエローファットテールスコーピオンを倒していき、残り半分。
このまま一気に片付ける……そう思った時であった。
突如地面が揺れ始めたのだ!
「な、何だ!?」
突然の事に戸惑っていると、近くの地面から巨大な生物が飛び出してきたのだ!
「キシャアアアアアアアアアアアアア!!」
「あれは……巨大なミミズ!?」
地面から飛び出してきたのは、8メートルはあるかと言う赤黒い体色をした巨大ミミズだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます