虫から始める魔王道

第1話 誕生

私の名前は貴星真也。

昔から虫が好きで、夢は昆虫学者の二十歳である。

私は趣味の昆虫採集のため近所の山に向かったのだが、運悪くスズメバチに刺され死んでしまったらしい。

なぜ、死んだとわかるんだ？　と思うかもしれないが、下に自分の体が見えるからだ。

自分でいってて何言ってんのコイツ？　と思うがどうやら体から魂が抜け出たということだろう。

あとなんかどんどん体から離れて天に昇っている、天に召されるようだ。

嗚呼、まさかこんな簡単に死ぬとは思いもしなかった。

「今度生まれ変わるなら、人ではなく昆虫にでもなりたいなぁ……」

その言葉を言ったあと、私の意識は薄れていった。

……あれ？

ここどこ？

気がつくと目の前は真っ暗だった。

ていうかおかしくね？　私、死んだはずなんだけど……とりあえず私は身体を動かそうとするが、動かない。

と言うか、身体の感覚がないのだ。

ま、まさかこれって…植物人間状態！？　生きてはいるけど動けない身体になったとか！？

と思った瞬間、身体が少しだけ動いた。

そして、私は自分の身体が何かに覆われていることに気付いた。

これは……卵？

これはつまり、自分が卵の中に入っている雛かなにかだということなのだろうか？

そうと分かればやることはひとつ！　卵を割り、外に出ることだ！　

私は気合いをいれて身体を動かしはじめた！　

そして、しばらく動いていると、卵にひびがはいり、そこから光が差してきた。

よし、もう少しだ！　身体を動かし続けていると……

パキパキ……パキン！

ついに卵が割れたのだ！　やった、やったぞ！

私は歓喜の声を上げた。

「キュイィィィィィィィィィィィ！」(よっしぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！)

すると、聞きなれない奇声が聞こえた。

「キュイ？」(あれ？)

どうゆうことだ？

「キ」(あ)

「キー」(あー)

声をだしてみるが、聞こえてくるのは奇声だけだった。

(こ、これはまさか……)

わかっていた、卵から出てきた時点で理解していたつもりだった。

自分の身体を見てみる。身体は黒光りしていて、足が六本、頭部に一本の角が生えていた。

私はこの生物を知っている、いわゆるカブトムシとよばれる昆虫だ。

つまり、私はカブトムシになったということらしい。

「キ……」(や……)

この驚愕の事実を知った私は……

「キュイィィィィィィィィィィィ！！」(やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！)

再び歓喜の叫び声を上げた。