光輝く能天使《レディアント・エクスシア》に花束を
姫宮未調
『里子システム』と未婚の女
「……
「特にはありませんが、家事炊事などは基本的に問題ありません」
《里子システム》・子どもの生まれたこの街に来て、成人までをサポートする『親』制度。一対一を最低限とし、毎月補助金が支給される。『親』は育てることが仕事であり、子どもに寂しい思いを、コンプレックスを軽減させることを第一とする。家事炊事や学校行事の参加などの子どもに関わりのあることには積極的に行うことが義務づけられている。
この制度の応募は基本的に女性か夫婦。子育てを一度は経験した人が大半であり、未経験者は保育士などの職経験の者がちらほら。あまり若い応募者はいないのだ。40代後半以降がメインで、たまに来る若い応募者はすぐに辞めてしまう。だからこそ、子育て未経験で保育士などの子どもに関わる職経験もない女性の応募は嫌煙対象とされていた。
「では……、あまり押し付けるようで申し訳ないのですが……」
いくつかの子どもの写真の中でも、一番年嵩のある学生服の少年の写真を取り出す。
「気立てはいい子なんですが、少し強面なためか……、その手の友人に絡まれやすくですね。怖がって『親』が長続きしないのです」
何か言いにくそうな面接官に迪子は向き直る。
「私もダメかどうかはやってみなきゃわからないじゃないですか」
「そ、そうですよね! それに本当にいい子なんです! どんな『お母さん』でも積極的に母親として接しようとしてくれますから! 」
嬉しそうに手続きを完了させ始める面接官。
このシステムはいい方にも悪い方にも作用する両刃のシステム。成功例が多いため、失敗例は浮き彫りにならない。その失敗例のすべてを担うのがこの少年
役所は詳しい経緯を知らないために、彼の処遇をあぐねいていた。あと4年、あと4年なのだ。4年で親のいない劣等感を如何に軽くするか、そればかりが懸念されていた。
……大人たちの贖罪の制度、それが押しつけにならないためには如何にすべきか。
そもそも、何故親のいない子どもがこの街に多いのか。
……勢いだけで子どもを作って、街からいなくなるならまだしも、自殺する母親が後を立たない。そう、未婚の母が産んだ子どもが1人寂しく取り残される。……原因は未だに解明されていない。
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