光輝く能天使《レディアント・エクスシア》に花束を

姫宮未調

『里子システム』と未婚の女

「……田添迪子たぞえみちこさん。まだ35歳でお若いようですが、子育てや家事炊事の経験は? 」


「特にはありませんが、家事炊事などは基本的に問題ありません」


《里子システム》・子どもの生まれたこの街に来て、成人までをサポートする『親』制度。一対一を最低限とし、毎月補助金が支給される。『親』は育てることが仕事であり、子どもに寂しい思いを、コンプレックスを軽減させることを第一とする。家事炊事や学校行事の参加などの子どもに関わりのあることには積極的に行うことが義務づけられている。

この制度の応募は基本的に女性か夫婦。子育てを一度は経験した人が大半であり、未経験者は保育士などの職経験の者がちらほら。あまり若い応募者はいないのだ。40代後半以降がメインで、たまに来る若い応募者はすぐに辞めてしまう。だからこそ、子育て未経験で保育士などの子どもに関わる職経験もない女性の応募は嫌煙対象とされていた。


「では……、あまり押し付けるようで申し訳ないのですが……」


いくつかの子どもの写真の中でも、一番年嵩のある学生服の少年の写真を取り出す。


「気立てはいい子なんですが、少し強面なためか……、その手の友人に絡まれやすくですね。怖がって『親』が長続きしないのです」


何か言いにくそうな面接官に迪子は向き直る。


「私もダメかどうかはやってみなきゃわからないじゃないですか」


「そ、そうですよね! それに本当にいい子なんです! どんな『お母さん』でも積極的に母親として接しようとしてくれますから! 」


嬉しそうに手続きを完了させ始める面接官。


このシステムはいい方にも悪い方にも作用する両刃のシステム。成功例が多いため、失敗例は浮き彫りにならない。その失敗例のすべてを担うのがこの葛木かつらぎさかえ16歳、高校一年。身長183センチと高めでイケメンだが、強面。彼だけならばただの器用貧乏。問題はなのだ。

役所は詳しい経緯を知らないために、彼の処遇をあぐねいていた。あと4年、あと4年なのだ。4年でを如何に軽くするか、そればかりが懸念されていた。

……大人たちの贖罪の制度、それが押しつけにならないためには如何にすべきか。

そもそも、何故親のいない子どもがこの街に多いのか。

……勢いだけで子どもを作って、街からいなくなるならまだしも、する母親が後を立たない。そう、が産んだ子どもが1人寂しく取り残される。……原因は未だに解明されていない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る